確かに慟哭はあったのだ微かな些細な僅かな兆候は気が付けば掻き消えて色にまみれたのは果たして私だけだったろうか意味は無くまた気が付けば周りは鉄の塊だらけで赤いのと黒いのがわんさか転がっていてそれはもう二の句も告げないってもんだ全くここは地獄絵図だと言ったのは誰だったっけあるいはそこの塊なのかもしれなかった彼はそこの塊なのかもしれなかった私の考えはとりとめも無いのさ戦地だと言うのに戦だと言うのに全く見上げたもんだよ相変わらず顔を変えて変えて変えてそれしか能が無いもんだから遂には本来の己の顔を忘れてしまう私は誰だったっけ浅はかな私はあるいはそこの塊か果たして



(三郎)



はっとする

誰だったっけ彼女は

声が逃がしてくれない

思い出すより早く

戦に掻き消されて




止めてくれ返してくれよ私の場所へ返してくれ頼むからもう声が聞こえようとて彼女が誰かさえ思い出せなくなってきてるんだ慣れすぎたこの戦地に戦と言う名の愚行に慣れすぎてしまったんだ赤いものを被って被せて塗り潰してやがて黒に変わるそれにまみれるだけならどれだけ楽なんだろうか耳障りな煙の音も例えば綺麗な空耳だとして誰も聞いちゃ居ないだろうに私にはやけに響く不快だ


(名前)


思い出した途端に忘れてしまった気が付けばもう私は居なかった私は誰だったっけあるいはそこの塊なのかもしれない浅はかな私はねぇそこの塊何か意味あんの?

全て剥ぎ取ってしまえ
私は誰だったっけ彼女は誰だったっけ?
届かぬ慕情尽きた溜め息遠い地にて私は彼女を忘れて私を忘れた
塊になった全て終わった
まるで意味の無い話さご清聴有難う有難う