三之助は馬鹿。馬鹿だけどなんでか恋仲、しかもこれが結構長いこと続いている。付き合うこつ?あったら誰でも付き合えるんじゃないの…や、方向音痴は覚悟したほうがいい、半端ないから。迎えに行くのもいちいち面倒くさいんだよね。子守かっての。

考えてみるとあんまりカッコイイとことかないなぁ。たまに変なこと言い出すけど。唐突に。


「触っていい?」


こっちが書物読んでてもお構いなしか。知らぬ振りをする。なー、とかおい、とかしつこい。うるさい。


「なに?」
「だから触っていいかって」
「なにを?」
「髪、とか…えっと…言わせんなよ!あほ!」
「いきなりなに怒ってんの!?」


言及すると耳まで赤くさせた三之助が不自然に手を突き出してきて、私の髪を一筋、ぎゅ、と引っ張った。痛いよ馬鹿。思わず顔をしかめるとすぐ撫でつけられる。何度も何度も撫でられる。なんだこれなんかすごい照れる…と思ったら手はいつの間にか頬に当てられていた。三之助の手はちょっと大きくて、ちょっとかさついている。じんわり熱が伝わる。私の顔にも血が上がってきて、きっと赤いんだ。


「おれもうお前のこと好きすぎてやばい」
「なんだそれ」
「やばいんだって」


馬鹿じゃん、なんてごまかしても駄目だった。いつの間にか私も馬鹿になった。じゃなきゃこんなおとなしく腕に収まらないよ。力加減わかってないからきついんだけど抵抗する気も起きない。
おれのこと好き?だって、そんなのもいちいち言わないとわかんないのかな?