ハロウィンなんて、そんなもの!


「さ、左近…」
「なんだよ」


なんだじゃないよ、私が聞きたいわ。
誰も居ない医務室でゆらゆらと大きな頭が揺れていた。異常事態だ。


「その頭!」
「煩いな」
「なんで南瓜被ってんの!?」
「授業に仮装が組み込まれてたんだよ」
「…うん」
「だから」
「いや、他にマシな仮装あったでしょうに」
「久作が悪ノリした」


ムスッとした表情(顔の部分は丸く刳り貫かれている)で忌々し気に頭を振る。重そうだ。
笑ってはいけないと思いはすれども止まらない。必死に口を手で押さえる。そんな私の様子に左近はため息を吐いた。


「お前なぁ…」
「ご、ごめん…!でももう放課後だよ?取らないの?」
「……………」
「まさか」
「そのまさかだ」


今日は当番じゃないのにさぁ、と愚痴を垂れる南瓜。


「取れないの…?」
「……………」
「っ、うわーん 左近が南瓜になっちゃったー!」
「なってねぇよ!」


泣くぐらいなら外すの手伝え!

頭をど突かれ我に返る。そうだ、辛いのは左近の方なんだ。


「頑張るわ」
「おぉ、適当に割っちゃって」
「そんな恐ろしいこと出来ない!」
「泣くな!」


だって初体験だもん、人の頭(南瓜)を割るなんて!
渡されたノミを握り締めて左近の前に正座すると彼も居住まいを正した。互いの喉が鳴る。極めて滑稽な状況だと思う。


「い、いくよ」
「おー」


ザクッ

……固い。力を込めてザク、ザク、ザク。亀裂が入った。それにしても悪ノリには勿体無い上等な南瓜だと思う。
再び私の喉が鳴ったのを見て左近は体を引いた。


「おい、名前」
「ごめん左近、ちょっとだけ」
「わ!」


彼の頬に付着した欠片を舌で舐め取ると、みるみる内に顔が赤くなった。構わず他の欠片も口に含む。

はっきり言って


「まずい…」
「当たり前だこの馬鹿!」