目の前で飯にがっつく潮江を見て、自分の血の気が引いていくのがよくわかった。せっかく作った料理も、味わうなんて過程通り越して口に含んだら即飲み込まれてしまい全くもってこの馬鹿野郎。

きっと暗い視線を送っていたのだろう、まずくなるからこっち見るんじゃねぇと言われ益々目を離さないよう意識した。潮江の言うことなぞいちいちきいていられない。ていうかもっと有り難く味わって食えってんだ。


「喉に詰まらせて死んでしまえ」
「あのなぁ、お前の料理が美味いからいけないんだろ」
「そんなん理由になるかボケナス」


箸が止まった。やっと味わう気になったのかと思いきや皿にはもう何もなかった。目眩がする。


「もう作るのやめよう」
「他の奴にはやるんじゃねぇぞ」
「聞いてた?ご心配なさらずともあんただけで精一杯ですよ私は」


他の奴には、なんて台詞はちょっとときめくかもなぁと動揺したのも束の間、潮江のまだ動いている顎にご飯粒を発見してため息をこぼす。


「ねぇ」
「なんだよ」
「例えば毒入りでも食べる?私の料理」


一息に茶を煽って息を吐く。


「たりめぇだろ」


こいつ馬鹿だよな。馬鹿な潮江。そこが好きだけどね、馬鹿だねぇ。


「じゃあ次は毒入れるか」
「笑いながら怖ぇこと言ってんじゃねぇ」





*ほのぼの系ということでひとつ