名前先輩はなんていうか、鈍感だった。俺の(周囲も若干引くぐらい)猛烈なラブアタックに全く気付かない。華麗にスルー。「先輩可愛いですよね」と直球で褒めても「兵助の方が睫毛長くて可愛いよ」なんて確かに俺は睫毛長いから無駄に反論も出来なくて、豆腐に「好き」って書いて渡したら「本当に豆腐好きなんだね」と感心しながら食われて終わった。終わってる、終わってるよ俺の恋。正直諦めたくもなる、でも駄目なんだ、どんなに鈍感な先輩でも好きなんだ。





「あ、こんにちは」


火薬庫に名前先輩がいた。頭上の棚に手を伸ばしてるけど全然届いてないので代わりに目当ての壺を取ってやると嬉しそうにはにかむ。無理、なんでそんなに可愛いんだ。いやぁ最近背が伸びなくてねぇと茶化す先輩の頭は俺の頭の半分下。俺はきっともっと伸びるから、先輩を守れるぐらい逞しくなるぞ。妄想に現を抜かしていると唐突に先輩が言った。


「兵助、私ね、好きな人出来たよ」


先輩、あんたどこまで鈍感なんだ。俺の手から落下した壺が足に衝突して割れた。同時に悲鳴が聞こえた。兵助大丈夫?大丈夫なもんか。この涙は一体どこから。