お前はまた下らないことを言う。いつか素敵な人に出会えたらいいな。淡すぎる夢に現を抜かす者ほど愚かなものはなく、実に滑稽で勝手にほざいてろとまで思うのだが、しかしこれ以上に人を希望に満ち溢れた表情にさせる何かを私はまだ知らない。


「…なぁ」
「恋がしたい」
「…………」
「恋すると女の子は綺麗になるって言うけど、男の子はどうなんだろうね」


馬鹿馬鹿しい。そんな絵空事は明日の天気ぐらいどうでもいい。重要なのはお前は一体私に何を言わせたいのかという点のみだ。どうせ何を言おうが「違うよ」と口応えするくせに、ああ、お前は例え恋しても変わらないだろうな。それだけはわかる。
世界中の誰よりも素晴らしい私の傍らで。お前は下らないことを言う。


「滝は好きな人いないの?」


最早私にはお前しか見えていないというのに、何を今更。