明け方に学園へ戻った与四郎が大欠伸をして廊下を踏みしめていると、前方から名前がやって来た。


「与四郎ぉー、おかえり」
「おー」


すっとぼけた声にはやはりすっとぼけた声で応対する。目をこすりながら彼女は言う。


「朝帰りとかしんどいでしょ」
「もう気にならなくなった」
「あぁそう……喜三太元気だった?」
「相変わらずナメクジだった」
「…相当眠そうだね、与四郎」
「おー」


駄目だ、ここから自室まで戻る余力がもう無い。なんとか活動している頭の隅でそう判断した与四郎は、ふぁ、と伝染した欠伸をかましている名前を見た。


「ちょ、…お前の部屋で寝かして」
「は?やだよ戻れよ」
「限界なんだよ…すぐそこだろ、いいだろ別に」
「残念、布団一つしか無いんですー。私もう一回寝たいし、与四郎の場所は無いんですー」
「一緒に寝ればいい」
「え」
「今更気にする仲じゃ無かんべぇ」


黙ってしまった彼女を欠伸しながらぐいぐい室内へ押して、そのまま布団になだれ込むと与四郎は即行で寝た。

だから、名前が「ばーか」と罵りそっと頬に口付けたことを彼は知らない。