二人の足元に広がっている六畳分の大きさを持つ花壇が綺麗さっぱり焼失した件について、説明を求められたので自分なりに言葉を選んで手際良く話していたつもりだったけれど、彼女は眉間に皺を深く刻んでいくだけで後は沈黙していた。


「だから、えっと」
「何から言うべきか…」
「とりあえず僕の話わかった?」
「全然」


「ぜ」と「ん」の二文字でばっさり切り捨てられた僕の話。でも大丈夫、彼女は随分と聡いから大体わかっている筈。わかっ…わかってるかな…。


「じゃあもう一回最初から、」
「いや、いい。やめてくれ。結構だ」
「だって名無しちゃん…」
「言っておくがね、君の話は断片的で飛び飛びな部分に無駄な身振り手振りが八割乗っかっている。しかもそれは目に付くだけであまり意味を成さない、要約すれば二言も掛からぬところをどうしてわざわざ難解にするんだい。頭が下がるよ」
「えへ、ありがとう」
「褒めてない」


特大のため息と共にしゃがみ込んだ彼女は白い指先で焼けた土をいじくった。生物委員に怒られるだろうな、とぼやいてから僕を見上げる。刺さるような視線を真っ向から受け止める勇気なんてなかったから空を見上げた。


「要するに」
「うん」
「この花壇の害虫駆除を頼まれたが意外に虫の数が多かったので煙りを焚いてあぶり出そうとしたら火が燃え移りこうなったというわけだね」
「そう!さすが!」
「この馬鹿野郎と言っていいかい」
「ひぇぇ」


ぶちぶちぶちぶち愚痴を垂らされた。せっかく二人きりなのに僕と彼女はいつもこう。怒らせるようなことをする僕が悪いんだけどさ。
後に悔やむから後悔なんだなぁ。今わかったよ。


「君、頭が悪いんだよ」
「そんな直球でこなくても…」
「要領も悪いし、ほっとけない」
「え?」
「ほっとけないんだ」


学園が壊滅する、という呟きは聞かなかったことにしよう。僕の耳は都合が良いと、これも彼女にいつか言われた台詞だった。


「名前ちゃん大好き」
「そんなの知ってるよ」


処置として、耕して新しく種を蒔くことに決まった。何の花がいいか聞かれ、どうせなら食べ物が実用的だと思ったのでじゃがいもとかどう?と提案したらこの馬鹿野郎と言われた。あーあ。