ぐう。私の唇あたりから変な音が漏れて、やっとそこで寝ていることに気づいた。夢の中では、まだ、昼間だったというのに。ここは、孝介のうち。孝介の匂いのする、ベッドの上(わたし変態みたい)。


「起きた?」


頭だけで返事をして、さっきより深く布団を被った。眠いわけじゃないけど、今更ながら、恥ずかしい。投げ出されたレポートは、たぶん孝介が揃えてくれているはず。ありがとう。それより、ベッドふかふかすぎ。やだ、離れられないじゃない。


「ごめん、どんくらい寝てた?」
「二時間くらい」


行方不明になっていた携帯を、枕元から救出。23時ちょうど。終電まで、あと一時間ある。


「本当にごめん」
「別にいい、レポート書いてたし」
「んーでも…」
「そのまま寝てれば?着替えあんだろ」


友達と恋人の境界線を見ているみたいだ。私の家の他に、もうひとつ、帰ってもいい場所がある。受け入れてくれる人がいる。そんなことを考えた途端、孝介にぎゅってすがりつきたくなった。いとおしい。


「今日は泊まってけ」
「あ、はい…」
「なんだよ、いきなり」「ううん、ありがとう」
「適当に風呂使っていいから。あ、風呂場で寝んなよ」
「大丈夫だよ」






寝る前は決まって、孝介の左どなり。おやすみのキスをする。そしたら、それを合図に孝介の左腕が伸びてくる。ちょうどいい場所に、頭を乗せて、1日で1番あったかい場所で、眠りに落ちる。夜は、いつからか私の幸せの時間になりつつあった。


「こういうのいいね」

大きな右手を捕まえて、指を絡ませる。相変わらず冷たい。末端冷え性。かわいそうな孝介くん。


「なにがだよ、早く寝ろ」


右手が強く私の手を握る。寝させてくれないのは、孝介じゃないか。と思いながらも、素直な瞼はだんだん閉じて真っ暗になる。でも、不思議。夜って全然怖くないね。



(20100203)
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