廉を待つ間、久しぶりに空を見上げた。高校の帰り道には、よくみんなで見たあの色も、ここではどこか薄汚く映る。景色が変わったのか、私が変わってしまったのか。三年という月日の重さが、私の肩にのしかかった。
「ご、ごめん」
息を切らせて走ってくる姿は、あの頃から何も変わっていない。先に待ち合わせ場所に着くのは、たいてい私の方だ。だから、絶えず白い息がこぼれる唇に申し訳なく思う。それと同時に、愛おしくて抱きついてしまいそうになる。
「お疲れさま」
「あ、うん…おつかれさま」
「ね!今日流星群が見えるんだってー」
「わ!」
「え、どうしたの?」
「いま 見え、た。白い、しゅっていう の」
「本当に?いいなー廉は目いいもんねえ」
私には星すら映らない。この都会の夜らしくない、不気味な明るさの中、どうやって流れ星が見えたんだろう。流れ星って、そんなに簡単に見えるもの?私にはないものを、廉はたくさん持っている。だから、好きなんだけど、だから寂しい。廉みたいに素直になれたら、私にも見つけられるんじゃないかなあ。自然と肩が落ちて、グレーの空の代わりに地面が映った。
「仕事つ、つかれた?」
仕事じゃないよ。疲れていないよ。廉がうらやましいだけ。自分に悲しくなっただけだよ。そんなことは、口が避けても言えなくて、首を振る。
「んー、大丈夫だよ」
「……あ、のね!俺っ」
「う、うん?」
「すき だよ、すごく、たくさん
透き通った声が流れ星みたいに、私の心を照らす。考えているのが読み取られてしまったようで、どんどん恥ずかしくなっていく。自分を嫌いになりそうなとき、手を差し伸べてくれたのは、いつも、廉だった。
隣を見上げると、顔を真っ赤にした廉と視線がぶつかった。さっきの言葉が頭の中で、何度も繰り返し響いた。体中の熱が頬に集まってきたけれど、視線をそらしたくない。廉の後ろに見える夜空は、いつもより綺麗で、思わず泣きそうになった。