闇の帳が辺りを包み込む。夜中独特の無音空間が広がる街のある一角、ひっそり佇む宿のとある部屋の中に青年はいた。
 呼吸はひどく荒れており、青年は息苦しさに喘いだ。瞼の裏に浮かぶ幻影はいつまでも青年を蝕み、傷付け、壊してゆく。既に傷だらけの心は、上から塩水を塗り込まれるようにして更に痛め付けられた。
 首筋に触れられる感触。ぐっと力を込められて気管が潰れる。酸素は肺まで届くことなく、身体は届かぬ酸素を求め呼吸を荒くする。口を大きく開け、手を伸ばす。
 青年が涙の溜まる目を開けると、そこには誰かのシルエット。目があったかと思えば、途端に聞こえてきた呪いの言葉。

「お前さえ生まれて来なければ。」

青年は涙を流した。果たしてそれは、苦しさから来る生理的な涙だったのか。それとも――







100419

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シリアス目指して挫折。
シリアス難しいです……。



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