授業以上に退屈なものなんてこの世に存在するのだろうか。俺はもう半ば機能していない頭でぼんやり思った。ひたすら数式を前に書いて解説されても、正直面白みも何も無い。数学なんてどうせ最後は公式に代入すれば終わりだ。50分もかけて説明する価値があるだろうか、反語。 そんなわけで、俺は今まさに眠りの世界へとダイブしつつある。教師の声は子守唄に聞こえてくるし、さらにこの穏やかな春の気候も合わさって効力は何倍にも膨れ上がった。もう少し、もう少しで寝る。目は既に閉じていて、あとは意識が陥落するのを待つのみだった。 今寝た。俺がそう思ったときだった。教室に鳴り響いた鐘の音を模した電子音。イギリスの有名な某時計台の音をモデルにしたという、忌ま忌ましいあの音が俺の眠気を中途半端に吹き飛ばした。教師も延長は面倒なのだろう、解説に折り合いをつけて宿題を言い残したあとさっさと教室を後にした。 穏やかな睡眠を見事に邪魔された俺は中途半端な眠気を持て余していた。くそ、教師に邪魔されるなら未だしもあんな電子音に邪魔されるなんて。そんなことをつらつら考えていると頭を何かで叩かれた。地味に痛い。見上げた先にはやはりというか何というか、イヴェールがいた。
「……何すんだよ。」 「昼休み、教科書販売だろ。早く行かないと混むからさっさと行くぞ。」
そうだったっけ。まぁ俺より記憶力のいいイヴェールが言うんだからそうなんだろう。横に置いてた鞄から財布を取り出して、先に歩き出していたイヴェールに追い付く。なんだかんだでイヴェールは面倒見がいい。こういうふとしたときにそう思う。
「イヴェールはいい父親になるよ。」 「は?なんだよ、急に。」 「いや、別に。」
意味がわからない、と言いたげなイヴェールを放っておいて俺は機嫌良く教科書の販売所まで歩いていった。
100419
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可愛い盗賊ってどこにいますか。
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