学パロ
昼休み。学生たちはやってきた癒しの時間を一分たりとも逃さぬように自由な時間を謳歌する。友人との会話を楽しむ者に始まり、数十分の間寝続ける者もいる。そんな中、俺とイヴェールはどちらかと言えば前者に含まれているのだと思う。別に会話を楽しんでいるというわけでもないが、でも基本的に昼休みはイヴェールとずっと一緒にいる。楽しいというわけでもないし、別に二人で約束したわけでもないが、それでも俺達は一緒にいる。ある種の腐れ縁なのだと気付いたのは、実はごく最近だったり。 そんなことは置いといて、俺の目の前には上品にコンビニパンを頬張るイヴェールの姿。普段は妹のノエルちゃんに作ってもらうという美味しそうな弁当を持参しているのに、今日はそれがない。毎日そうだったから、逆に奇妙に思えて仕方がない。これって俺がおかしいのか。そんなことはないと、ここではしておこう。 仮にノエルちゃんが風邪だったとすれば、こいつは普段の優等生っぷりを存分に発揮して、ノエルちゃんの看病のために学校を休むだろう。こいつのシスコンっぷりを知っている奴なら誰でも簡単に予想がつく。それほどまでに、イヴェールの妹溺愛っぷりはひどい。 ともかく、とても似合うとは言えないコンビニパンを不機嫌そうに、それはそれは不機嫌そうに上品に食べるイヴェールに、俺はちょっとやそっとじゃない恐怖を覚えた。例えるなら、急に馬が生肉を貪り始めたような、そんな感じ。超怖い。
「……ノエルちゃん、どうかしたのか?」 「昨日から修学旅行。」
仏頂面で告げられた言葉に、ようやく俺は納得した。そうか、そういえばそんな時期だったような。つまり、ノエルちゃんがいないイヴェールは朝早く起きることすら億劫で弁当を作るなど、もってのほかってことだったのだろう。朝、ノエルちゃんがいなくてへこんでいるイヴェールがいとも簡単に想像できる。 俺は軽く返事をして、自分のパンを食べた。ちなみに、俺が食べてるのは最近発売したカフェオレ味のパン。あんまり甘くなくて美味しい。イヴェールはフレンチトーストらしい。甘い匂いがこちらにまで漂ってきそうだ。 基本甘党のイヴェールは、メイプルシロップがふんだんにかけられているそれを美味しそうに咀嚼している。顔は相変わらず不機嫌そのものだが、雰囲気が幾分か柔らかい。 と、イヴェールの顔を観察している間にイヴェールは食事を終えたらしい。ゴミをパンが入っていたビニール袋の中に入れ、パックの紅茶を飲んでいる。早くないか?と思ったが、よく考えれば俺の方がパンがでかいし、そもそも俺はこれで三つ目だ。二つしか食べていないイヴェールが早く食べ終わるのが当たり前だ。逆に遅かったら不思議なくらいだろう。 意外にしっかりカフェオレの味が付いているパン。これは当たりだった。満足して味わっていると、目の前から視線を感じた。まぁ、言わずもがなイヴェールのものだ。赤い瞳はこちらがたじろいでしまうほどに俺のパンに視線を注いでいた。
「それ、美味いか?」 「おお。」 「一口くれ。」 「良いぜ。ほら、」
一口サイズに手でちぎって渡すと、イヴェールはそれをまじまじと見つめた。何味?と聞かれたのでカフェオレと返せば、微妙な表情が返ってきた。どうやら予想と違ったらしい。しかし貰った以上イヴェールは食べ物を粗末にはしない。口元へ持っていくとひょいと中へ放り込んだ。 暫くもぐもぐと咀嚼し、ごくんの飲みこむ。俯き黙っているイヴェールを見ながら、俺はよくわからない緊張感に苛まれた。なんだこれ、なんでこんなに重い空気なんだよ。
「……ど?」
沈黙に耐えきれず、とりあえず味を聞いてみた。イヴェールは眉間にしわを寄せながら、口を開いた。
「美味い。」 「マジ?」 「ああ、美味い。明日は俺も買う。」 「フレンチより安いぜ。」 「そうなのか?でも…まあ、あれも買う。」
どうやらフレンチトーストとこれがお気に入りらしい。先程の不機嫌が少し治ったようでほっと胸を撫で下ろした。やっぱり普段のイヴェールが落ち着く。中性的美人のイヴェールが不機嫌だと、普通の人よりもなんだか無機質で怖い。 手元に残ったパンを見る。イヴェールのお墨付きをもらったのが少し嬉しくて、明日も買おうかな、と一人思ったりして。
昼食はパン あと三十分何する? 次の時間提出のプリントの見直し。 え?あっ、俺やってない!! ばーか。
100428
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こんな盗賊が見たくて仕方がないです…。可愛い盗賊ってどこn(ry
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