で出たので、がさがさと書いてみたり。小学校教師のネタはまた別にいくつか書きたいです!

以下、サンイヴェです。









「いべーる先生、八つめのシーンのお姫様ね!」

 完全に固まったイヴェールに、俺は誰にも気付かれないようにため息をついた。劇の役を全部くじで決めると言った奴誰だよ、このあとこいつの機嫌取る俺の気持ちも考えろ!
 この男、人畜無害そうな顔で怒るとすごいのだ。怒る主な原因の一つに「女扱い」があるのだが、今回はまさにそこに当てはまってしまった。ああ、もう。どうしてそうなった。
 イヴェールは次第に動きを取り戻したが、顔が全く笑っていない。人形のように無表情のまま遠くを見つめていて、ああきっとやり場のない怒りをもて余してるんだろうな、と他人事のように思った。
 ところが、くじの魔の手は俺にも振りかかってきたのである。

「サン先生はその王子さま役で、お姫様をだっこで連れ去るの。」
「っはあ!?」

 ぼーっと壁にもたれて成り行きを見守っていたが、まさかのタイミングで名前を呼ばれて思わず大きな声が出た。男子が「サン先生が王子とか!似合わねー!」とか言ってるのに反論したくなりつつも、俺は委員長の女子の手元を覗きこんだ。
 そこには確かにイヴェールと俺の名前があって。なんとも言い難いむず痒さにイヴェールの方を見ると、あいつは大きな目がこぼれ落ちるんじゃないかと思うくらい見開いていた。

「ローランサン、……先生が、王子?」
「うん!」

 イヴェールは一瞬で顔を赤くして、「ローランサンに担がれるなんて先生は絶対ごめんだ!」と叫ぶ。おいこら先生って付け忘れてんぞ。
 しかし、小学生とはパワフルだ。そして、下らない嫌がらせに全力を尽くすのだ。
 結局多数決でお姫様認定されたイヴェールは、どすどすと荒い足取りで俺のところまで来た。

「ローランサン、俺を担げ。お前が無理なら俺はお姫様脱却だ。」
「え?」

 よくわからん論理を振りかざされて多少戸惑う。俺が視線をさ迷わせている間もイヴェールは俺の前に仁王立ちだ。顔には「出来ないだろ」っていう言葉をはっつけてる。
 とりあえずイヴェールの要求を聞くことにした俺は、イヴェールを引き寄せて肩甲骨辺りに手を添える。次に膝裏に手を差し込んだら、あとは力をこめるだけ。そりゃ成人男性一人ってことでかなり重いが、決して出来ないわけでもない。
 やったけど?と話しかけようとイヴェールを見た。

「、え?」

 思わず声が上がった。驚いたイヴェールの目には、涙が浮かんでいて。ここで俺は、ようやっと思い至ったのだ。
 これ、「お姫様だっこ」じゃね?

「おま、え、なにして」

 かあああ、と顔を赤く染めたイヴェールは、ぎこちなく言葉を発す。てか、イヴェールも、意識しすぎじゃね?感染したようにつられて顔が真っ赤になるのを自覚しながら、苦し紛れに「王子様」の台詞を言った。

「…『お迎えに上がりました、プリンセス。』」

 下ろした後イヴェールに一発殴られたのは、言うまでもない。




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