もう三日経つ。何からって、ローランサンが大怪我をして倒れてから、だ。

 盗みに入った屋敷には以外に人が多く。また、予定外の来客もあったらしく警備が厳重だった。逃走ルートの途中にメイドに見つかってしまい、大人数と剣を交えることになってしまった。当初からの役割分担で、俺はローランサンが警備員の気を引いてくれている間に手柄を某所へ隠しに行った。
 宿に着きローランサンを待って数十分後、古めかしい音を響かせながらドアが開いた。それとほぼ同時に、ローランサンの身体が倒れた。慌てて近寄ると、目に入ったのは血だまりと、腹部の大きな傷。そして、真っ青なローランサンの顔だった。
 血痕で居所がばれたらどうしよう、とか、そんなことを考えてる暇なんか無かった。急いでベッドへ横たえて傷口を押さえる。止血した後に包帯を巻いて、傷口からの発熱を押さえるために水の入った桶とタオルを持ってきた。ローランサンの呼吸は今にも消えそうなほど弱々しいもので。じわりと浮かんだ涙には気付かないふりをした。

 そんなことがあって三日だったのだが、未だにローランサンは目を開けてくれない。あの時と同じような呼吸を繰り返すだけ。不安で堪らなくて、でも出来ることなどほんの少ししかない。そんなほとんど無い自分に出来ることをするために、今日も薬屋に赴いたのだった。
 薬屋で包帯と消毒液を買ったあと、憂鬱な思いのまま帰宅した。別に自宅なわけでもないが、少なくともまだしばらくは我が家になりそうだ。

「ただいま。」

 ローランサンと組みはじめて癖になってしまった言葉が虚しく響く。自分一人しか聞いていないのに、一体何に対してのただいまなのか。自嘲気味に笑った。

「おかえり。」

 弾かれたように、顔を上げた。
 紙袋が手から滑り落ちて。でもそんな些細なことを気にする余裕なんてもの、今は生憎持ち合わせていない。部屋の奥、ベッドの上では、ローランサンが微笑んでいた。
 三日ぶりの藍色がひどく優しい色をしていて。
 三日ぶりの声がひどく心地好くて。
 無意識に手を延ばして、抱き着いていた。

「ヘマしてんじゃねぇよ…!何してんだ、心配ばっかかけさせやがって!お前のせいで今回の利益がパーだ!」
「ごめん、イヴェール。」
「床が固くて全然眠れないし、ワインの栓固くて全然開けれなかったし。」
「うん、ごめん。」
「…………おかえり、ローランサン。」
「……ただいま。」

 照れたようにはにかんだ藍色に、頬から一筋雫が伝った。








ロラサンにぐわって怒るイヴェと、それを静かに受け止めるロラサンが書きたかった…




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