小説 | ナノ
Amour.. 1

(!)ラグハザ中心、ハザマ総受けのパラレルです。ハザマが若干若いです。獣耳要素があります。軽い暴力表現が含まれます。
以上を踏まえた上で閲覧なさって下さい。






煙たい空気、彼方此方から聞こえる、獣とも人間ともつかぬ鳴き声。青年、ラグナはこの場所が嫌いだった。
またもや、狭いケージに入れられた、角の生えた少女と目が合う。彼女のほっそりした首には革の首輪が付けられ、そこから伸びる鎖の先は先程からしきりに手を叩き大声を上げる男の手に握られている。
少女の縋るような大きい瞳から逃げるように、ラグナは早急にその場を離れた。

反吐が出そうだ。

何が商品か。彼等はまるで人間じゃないか。
少女のケージに貼られた値札を思い出す。彼には到底手が届かぬ値だった。
彼等のような商品は、金持ちを対象にした合法の愛玩動物だ。あの少女もじきにどこぞの中年にでも飼われる事になるのだろう。
そして、大きくなり、飽きられれば捨てられる。
ラグナには、今や当たり前となっているそれが信じられなかった。外見こそ違えど、彼等は自分と同じ思考を持ち、同じような複雑な感情を持ち合わせているのだ。

先程の少女のものであろう泣き声が聞こえてきた。次いで、男の怒鳴り声。
それを振り切るように、彼は足早に市場を抜けた。

「あーちくしょう気分悪ィ……さっさと終わらせて帰るか…」今日の仕事である配達も次で最後だ。
雲行きの怪しくなってきた空を見上げ、ラグナは溜め息をつきつつ歩を進めた。

かたり。配達物が無事、郵便受けの底に着地した音を聞き、仕事を終える。時計を確認すると依頼された時間制限まで一時間近く余裕があった。
どうやらこれでまた暫くは仕事を取るのに苦労はしなくて済みそうだ。

「配達終了。今後とも御贔屓に…と。」クライアントに配達完了を知らせるメールを送り、ラグナはふぅ、と息を吐き出すと帰路についた。


そしてそれは、狭い路地を抜けようとした時に起こった。

「ッ…!やめて……放して下さい…!」
「るせーな。おい、やっぱこいつ、ここで頭ぶち抜いちまおう。バレやしないって。」
「処分場まで持ってく約束だ。そんなに言うならまたぶん殴って黙らせれば良いだろ。」

曲がり角の先から物騒な声が聞こえたと思った矢先、目の前の積み上げられたビールケースの群れにぼろ布がぶつかり、派手な音を立てる。

「……!!」

ぼろ布は、そのままラグナの足元に転がった。
見れば、それからは細い手足が覗き、フードのように頭部に被った布からは明るい緑の毛髪が見えた。乞食の少女か、はたまた娼婦か。

厄介事だ。それは分かっていた。しかし、「おいっ…あんた、大丈夫か!?」割れたビールビンの破片が靴の下でバリバリと音を立てるのも構わず、慌てて彼女の動かない体を抱き起こす。顔は隠れて見えないが、白い肌のあちこちに付いた切り傷、打撲痕が痛々しい。

「あー?何だお前。うちの商品に手ぇ出すんなら金もらうぜ。」
曲がり角から男が二人、現れる。少女を殴ったであろう方がラグナに向かって不愉快そうな声をあげた。服装からして、どこかの企業の従業員だろうか。薄汚れた制服を着ている。
自分でも馬鹿な事をしていると思いながらも、咄嗟に少女を背中に庇った。

男が下卑た笑い声をあげる。「何だコイツ、正義の味方気取りの馬鹿か!」自分でも思っていた事を笑われ、惨めな気分になる。しかし、昔からこういう性分なのだから仕方ない。
背中で少女が身じろぎするのが分かった。頭を打ってはいたが無事だったようだ。

「まあいいや、俺ら急いでんだよ。一緒に処分されたくなかったらさっさとソイツ返しな兄ちゃん。」もう一人の男がずい、と手を伸ばし、ラグナを突き飛ばそうとした。
咄嗟に体内の空気をぐっと止め、右腕に神経を集中する。そして繰り出された一撃は、男の手がラグナに触れるより先に、男の鳩尾を捉えていた。
「なっ……うわっ!」
そのまま、勢い良く吹っ飛んだ男は、背後にいた仲間を巻き込みながら反対側に積んであったビールケースへと突っ込み、そのまま二人仲良く伸びる事となった。
今日はビールビン達には厄日だったのか。などと、どうでも良いことを考えているうちに背後から怯えたように押し殺した悲鳴が聞こえ、振り向く。
「お、あんた、気が付いた…………」
続く言葉は、驚愕に呑み込まれる事になった。

すらりと伸びた脚、華奢な腕、陶磁器のように滑らかな肌。しかしその胸元は明らかに硬質で、整った顔はラグナと同じ、男性であった。いや、それはまだ良い。問題はその上だ。


起き上がった際に頭部からずり落ちたであろう布。その下から出てきたのは、艶やかな髪から覗く、一対の小さな獣の耳だった。








絵が微妙にリンクしてなくてすみません^p^
とうとうやってしまいました獣耳パラレル…!続きます!
本当は漫画でやりたかったのですが、面倒くs

小説とか、ほとんど書いたことないので、お見苦しい所も多々あるかと思いますが、そこは生暖かく見守って頂ければ幸いです。

あと、書いといてなんですが、恥ずかしくなったら急に消したりするかもしれませんすみません。




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