小説 | ナノ
無題
※注意※
痛い上、微グロなラグハザラグです。ハザマが可哀想で、ラグナが精神的に弱くて、テルミが意地悪です。
テル→(←)ハザ←ラグ
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ごきり、 また、自分手の下で彼の骨が砕ける音がした。 彼が動かなくなってからもう随分と経つ。 開きっぱなしの唇から流れる血はとうに止まり、がくりと捻じ曲がった首はそのまま硬直しつつあった。
目を覚ますな。
そう、切に願う。 しかしその一方で動かない彼に恐怖を感じている自分がいる。
彼を殺したのはもう何度目だろうか。 流れる血には慣れた筈だ。彼の瞳から零れるものが生理的なものだという事も知っている。それなのに、
彼の首を掴む手ががくがくと震える。がくがく、がくがくと、
早く、早く、早く、早く動くか腐るかどちらかしてくれ。耐えられない。これ以上は、
怖いのだ。俺は。その眼球が再び自分を映すのが。殺めた体が徐々に体温を失っていくのが。怖いのだ。
どれくらい経っただろうか。 二人を包む空気が急激に変わりつつあるのを感じた。 手の下の体が痙攣を始め、一度は止まっていた吐血が再び、激しく始まる。 そして、一際酷い痙攣の後、ぎゅるりと動いた彼の眼球が意志を持って自分の姿を捉えた。
「おはよう仔犬ちゃん」 赤い弦月の口元から紡がれる声は先程確かに潰した声帯から発せられたもので。 粉々に砕けていた脊髄が硬さを取り戻していくのをありありと手のひらに感じ、ぞっとして彼を突き放すように立ち上がった。
「楽しかったか?」 「何、を」 「こいつを殺すのは愉しかったかって聞いてんだよ」
彼とそっくりの顔のそいつは、ひらひらと手のひらを返し鮮血に染まった舌をちろりと出して笑った。
黙れ。そう呟いた声は情けなく震えてそいつを面白がらせる。
「また殺せなかったな、俺を。またテメェは俺に復讐を果たせなかった。 またテメェはコイツを失う恐怖に呑まれた。」
分かっているそんな事は。 何故頭を砕かなかった。 何故心臓を貫かなかった。
分かり切っている事だ。
「……ハザマ、」
「可哀想なハザマちゃん。あいつはまだ死んだ侭だ。泣いてたぜ。仔犬ちゃんに殺されるのが悲しいってな。愛されてんなぁラグナ君。」 「やめろ!」
思わず逆上して叫んでいた。 コイツが憎い。彼の何もかもを知っているコイツが。彼に忠誠を誓われているコイツが。 「……殺してやる。」 はっきりと発したはずのその声は掠れていて、奴はいよいよ楽しそうに口端を吊り上げた。
「殺せよ。チャンスならこの先何度もあるだろ。だけどな、」 不意に奴の顔が近づいた。その瞬間浮かべた、人懐っこい笑顔に俺の体は一気に硬くなる。 「その時は、私も彼と共に逝きます。……ってな」
コイツは彼の真似事をしているに過ぎない。しかし、彼が口に出すことは無くとも明らかに思っているであろうその言葉に動揺を隠す事は出来なかった。そんな俺を見て目の前の男はますます楽しげに笑い、彼の体を解放したようだった。 糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる体を慌てて抱き抱える。
「……んぅ…」 「……!」
一度は閉じた瞼が震え、先程とは違った光を宿した瞳が覗いた。
「ラグナ…さん…?」 「ぁ、……ぁあぁぁぁあああ」 「ラグナさん…ラグナさん!」 「あああああああああ」
殺した殺した殺した殺した殺した俺が、俺が、 見ろ無残な傷痕のついた腹を、まだ繋がりきっていない指を、筋組織の覗く脚を、回復が追いつかず裂けたままの頬を、先程死に物狂いで引きちぎった上腕を。 鮮やかに覚えている。皮膚が裂け赤いものが飛び出し彼が悲鳴をあげたのを。それで俺は彼の首を掴んだのだ。これ以上苦しませる位ならいっそ、と。
しかし彼は生きている。生き返った。生き返ってしまった。
「あああああああああああああ」 頭が酷くガンガンする。呼吸が苦しくなり目の前の彼の姿が歪んだ。
彼が何事か叫び、傷付いた腕を無理やり上げて俺の頬を撫でてくれる。 そうしてやっと、自分が息をしていなかった事に気付いた。 急に器官に入り込んだ空気に咽せる。
頬を滑る、まだ体温の戻らない指先を握りしめ、後は何時もと同じ。俺はだだひたすら謝り、泣きじゃくりながら彼に縋る。
ごめんな。 ごめん、ハザマ。 ごめん、
彼は困ったような笑みを浮かべて何度も何度も頷く。
「おまえを殺したくない。」
彼がぎゅ、と抱きしめてくれた。 その時発せられた「ごめんなさい」という声。
俺は聞こえない振りをした。
……(^p^)
なんか、すみませんでしたー!
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