科学が発展し、いつしか争いは人間が直接手を汚すものではなくなっていた。 全面的に機械兵器を使用しての血の流れない平和的戦争。それがその世界の争いの主流である。 しかし増え過ぎた平和的戦争は徐々にその規模を広げ、気付けば創造主である人間をもその惑星から駆逐するまでに至ってしまっていた。 主を失った機械達は廃棄物と化した。 精巧にして頑丈な廃棄物達は主がいなくなったのにも気付かず争い続ける。 無人でも整備の行き届くように造られた兵器工場はひたすらに争う理由も無くなった筈の兵器を製造し続けていた。 2体のアンドロイドがいた。1体は青い髪の中性的な青年の姿をしているが、高性能な戦闘用アンドロイドであった。 もう1体も同じ型なのか、やはり中性的な青年の姿をしていたが、誰が何の目的で作ったのか戦闘能力を持たなかった。色も全体的に白く頼りない印象を与え、それどころか自力では立つことすら叶わぬ体である。 しかし、彼には高度な『心』のプログラムが搭載されていた。 そしてそれに惹かれたのか、青いアンドロイドは常に彼を守るように寄り添っていた。 彼らは他の機械と戦う事をせず、自衛にのみ徹しているようだった。 我々は彼らを保護した。2人とも人語を解し、話す事が出来たのだ。 「623年間。」 白いアンドロイドは掠れた声で呟いた。 623年間、故郷を捨て他の惑星へ逃げていた我々の帰還を待っていたのだと。 |