手紙 | ナノ
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
手がみ
no.(001)...○/△   

おまえにいわれたから、手がみかいてみた。
いまは、オトモと キャンプでよこになってる。
よる。くらい。とおくでティガレックスの ごきげんなほうこうがきこえてくる。
きょくげんじょうたいのティガレックスをほかくしてこいとかムチャいう。ひねりつぶす。ティガレックスのほう。
あと、ききたいことがある。おまえにおしえてもらったのに、ひらがなの「ヌ」のかきかたわすれた。どうだったっけ。またおしえてくれ じゃ


……

手がみ
no.(002)...○/□   

「ぬ」 やっぱこれムずかしいって。きらいだ。
クエストのほうはじゅんちょう ティガのねどこをはっけん あしたねこみをおそう。
今のじてんではケガはない けいたい耳せんわすれたけど オトモにおこられた。おまえもおこるかな?ごめん。つぎからきをつける。「を」もきらいだおれ。
こんやはほしがひかってる。あしたははれそう。
おまえの手がみのへんじ。なんてかくかまよう。かきたいことはあるけど、じをかくのがムつかしくてきびしい。やっぱあってはなす方がすきだ。はやくかえる


……

手がみ
no.(003)...×/○   

よていより早くおわった かえる。でもまたここからがながい。
いまははけんされてきたギルドのひとたちが ねムってるティガのからだをこていしてるのを ながめてる
ねむい はらへった


……

手がみ
no.(004)...×/◆   

いらいにんに引きわたしおわり。
バルバレ行きのふねつかまえたんで、やっとゆっくりできる。
いま リーダーからもらった手がみを よみかえしてたんだけど

やっぱりおまえってきれいだよな。
ずっとみててもあきない。
ぼけっと目でおってるとたのしい。

かえったら、やっぱりもう一回おれに
字をおしえてくれ
おれもおまえくらいきれいに字かけるようになりたい




(ここからしばらく日があく)








「旦ニャさん、お魚とれたニャ」
「おー」
「また、書き写ししてたのかニャ」
「おう」


海の波に揺られていた船から、砂原を突き進む船に乗り換え、目的地であるバルバレまであと数日ほどとなった頃。
今晩の晩飯の種にしようとデルクスを獲って戻ってきたオトモアイルーが見たハンターは、今日も揺れる机に向かって 紙に文字を書いていた。
今回のクエスト中に届いた、筆頭リーダーからの手紙を横に置き、そこに書かれている達筆な字を凝視しながら、不恰好にペンを持って真似書きをしている。

「人の字を真似して書くことも勉強の一つになるってリーダーが言ってたんだ」

ハンターはそう言って、かれこれ数日ほど暇があればああやって勉強をしている。元来、何事も熱心には取り組む人柄が前面に押し出ている。

オトモアイルーも字は書けないが――なにせ肉球だ――、がんばるハンターを見てひとつ思うことは、やはりあのペンの持ち方が悪いのではないだろうかと言うことだった。


「でも意外だったのニャ」
「? 何がだ」
「あの筆頭リーダーが、旦ニャさんの手紙を欲しがるよーなお人だったとは思わなかったのニャ」

そのオトモアイルーの言葉を聞いて、ハンターはペンを持ったまま顔だけをアイルーの方に向け、

「な。俺もそう思う」


……そうハンターは言ったが、けれども可笑しなことに、その表情には笑顔が見られる。
どう見ても それを"楽しんでいる"ようだ。

それを指摘してやると、ハンターは観念したように、眉を下げて頭にを掻きながら、情けないような顔して笑った。


「手紙を誰かに書くとか初めてだったから、どんなモンかなと思ってたんだ俺も。 でも、郵便屋のアイルーがアイツからの返事を届けてくれるたびに、嬉しくなってなぁ…。クエスト中だってのに心が浮き足立つ感じがした。あんな感覚初めてだったよ。何日も何日も、依頼のモンスターが現れるまで待機してるのって、"疲れる"行為だったんだなってそれで初めて気がついた。読むと心が落ち着いてくみたいで……それに、読んでるとリーダーの顔が頭に浮かぶんだ。そうするとまた落ち着く。不思議だよなァ」

「ニャ〜 そういうモンかニャ? ボクには分からないのニャ」
「お前だって前に矢文を貰ってたじゃないか」
「アレはノーカンニャ!!」
「ははは」












「……………」

「 リーダー!そんなところで何読んでるッスか?」

「!!! 何でもない!」
「え〜? でも何だか楽しそうッス。ニヤニヤしてたッスよ!」
「していない。気のせいだ。今すぐ持ち場に戻れルーキー」
「は〜い」


「……………………」


「…………」
「………」
「……………いいから持ち場に行け!!」
「すみませぇーん!!」