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最期に目の前に見えたのは眼前にいた敵ではない。幻の中、此方へと笑いかける主の姿だった。其方へと手を伸ばそうと動いたが、虚空を掴む感覚だけがした。自分の"腕"は無くなっていた。次に"脚"が崩れ、"腹"が落ちた。最後に"眼"が失せ、"喉"は声を失った。負けた。自分は戦いに敗れ、折られた。残留思念と化した頭がそう理解した時、刃が焼ける様に熱を持つ。嗚呼、"自分"が今、怒り狂っているのだ。こんなところで折れるつもりなどなかった力はつけてきたつもりだった最後まで主の供をすると決めていた自分が消え去る時は主の助けとなりてお役目が終わるその時だと信じて疑わず今日も戦果を持ち主の元に帰るのだと嗚呼どこで誤った?油断?慢心?いや、違う。刹那の命取り。それだけが戦場の全て。分かっていた、理解していた、だが無駄だもう遅い。自分は帰れない。部隊に、本丸に、あるじのもとに。あるじ。あるじ。アルジ、あるジ、あるじ、あルじアるじアルじあるじアルジあルジアるジあるじアルじあるじアルジあルジアるジあるじアルジアルじあるじアルジあルジアるジあるじあるじ、主!嫌だ!嫌だ!どうしていつも自分の感情と現実は相反する!いつだって自分を置いて逝くのは人間の方だった!割り切れたのだ!人間とは儚い存在だ!すぐに病に斃れ、すぐに寿命を向かえる!付喪神である自分とは如何しても生きる速度が違うから仕方ないのだと!それが!どうして!何故己の番を迎えてしまったんだ!嗚呼、忌々しい。この穢れのようなものはなんださっきから自分の周りに纏わりつくようにして、鬱陶しい。重く、苦しく、どろどろとしていて不愉快極まりない。まさかこの穢れが、俺を地獄とやらに落とすというのか?付喪神にはあの世など存在しないと言うのに、このまま俺は何処へ落とされて逝くというのか。その先には何が待っているのか。これまでの所有者たちが先にいて俺を待っているのだろうか。俺がこれまで斬り棄ててきた人間たちがその恨みを晴らすため俺を折ろうと我先に列を成しているのだろうか。それを思うとひどくくるしくなった。この先に待っているものが何であれ、それらは決して俺を歓迎しない。俺のことを望まない。望まれない。望まれ、ああ、そんな、そんなこと、ああ、あるじ、あるじ、あるじ。

あるじのもとへかえりたい
あるじのもとへかえりたい
あるじのもとへかえり
あるじのもとへ
あるじの
あるじ
あ、




「あるじ」

帰ろう 何としてでも あの場所へ あの方のもとへ
おれが ここで おれたという れきしをかえて
主の待つ 本丸へ 帰る為に
ここで おきた すべてを しゅうせいして
自分の望む本来在るべき形の時に成せば
きっと おれは あるじのもとへ かえれるんだ


「あ アる、 あるジ イ、イ、イ イ…」


そう、 ソウすれ ば ソウしなくてはいけないのならば、 この、ふゆかいなけがれもうけとめられるそうだ受け入れようおれはまだしんではならないたとえどんなかたちになろうとも構わないあるじのもとへ帰ればまた俺に肉体を与えてくださるだから少しの間だけこの醜い姿を受け入れることにし あ あ アア あ、痛い、痛い イタイいたいイタいいたいイタイ あ イタイあるじあるじあるじあるじおれはすぐにあなたのもとへもどりますからねア、あは、ええ、スぐに、あな、アナタ、あなたの、もとに、かえ、かえ―――――……………
















 、…………?