▼ ふたつのたいよう
「駄目だ!一緒に行こう!」
「な……」
引っ張られた手は、今度は外れなかった。熱い掌と触れる。それは、ナマエが長年感じたことのない人肌。姉のように温かい手で、姉と同じ目が、真っ直ぐにナマエを見据える
「…エース、別に私を連れて行かなくても能力は発動し続けるから問題はないわ。一定の時間が経てば消えるから大丈夫よ」
「それだけじゃねぇって! アンタだって、ポートガスの人間なんだろ!?」
「……インペルダウンの門番に就いた時、棄てた名よ」
「棄てたんならまた拾えばいいじゃねぇか!」
よく分からない理屈を、さも当然であるかのようにどうしてそんな力強く言えるのだろうか
この子は事の重大さをもっと分かれる子だと思っていたのだけれど
「………あなた達を逃がした事によって私は海軍から追いかけられるわ」
「そんな条件、おれらと大して変わんねぇだろ」
「エース、女、話なら後にしてもらえねぇか。逃走準備は出来たぞ」
「………分かったわ」
そうだ、まずはココから逃げなければエースは生かせない
待たんかナマエ!!と恐ろしい赤犬殿の怒声から耳を塞ぐ
手で触れた支船と本船の姿は見る見るうちに薄れて行く。それに焦った海軍将校達は、完全に消え入る前に何とか、と集中砲火を浴びせてきたが、それを白ひげのクルー達が1人1人(その中にはルフィも混じっていた)撃ち落して行った
姿を消したモビーディックが先導するように、マリンフォードの海から出て行く
その後ろを支船と、ニューカマーの船たちが付いて来ていた
「………どうしましょう」
本当に、ついて来るハメになってしまいました。エースと白ひげたちを逃がせれたなら自分は死ぬつもりでしたのに
「……強引なところまで、引き継いでいたのね」
はぁ、とナマエは大きな身体を折り曲げて座り込む。慌ててエースが駆け寄ってくれたが何てことはない。能力の使いすぎで少し眩暈がしただけだ
「大丈夫かよナマエ」
「…あら…名前…」
「さっき赤犬とジジイが言ってたから。 …ナマエは、おれを助けるつもりだった、ってことで…いいんだよな?」
「…まあ、そうね。姉さんとの約束だったから」
「お袋と姉妹って…年食ってんのか?」
「12歳差だったからね。私はまだ30よ」
はあ、眩暈が酷い
あいたたたた、と痛む頭を押さえて蹲る
おいっ大丈夫か!と言うエースの声を脳裏で反芻させる
姉さん、
ねえさん
お姉ちゃん、わたし、ちゃんと護ったよ、これでよかったのよね?わたし、間違ってないわよねえ?
ぼんやりと顔を上げる。視界に飛び込んできた赤の正体は、
大切だった姉の忘れ形見と、久方ぶりに目にした外界の太陽だった
眩しい。まぶしすぎて、涙がでてしまうよ、まったく
「う…っ、うぅ…」
「わ、わ、ナマエ、泣くなよ」
「エース、オバサン泣かせたのか?」
「ちげぇって!」
「ふふふ」、ナマエは目を細めて笑った
▼インペルダウンの門番女主でエース・白ひげ生存IF/ぱんじーさん
リクエストありがとうございました!
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