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▼ きっと俯いて泣いてしまうから



「エース、お逃げ」
「え…? お前、門番の…!」



「ナマエ!何故お主がここにおるんじゃ!」
「能力を使えば、こんなトコへの潜入なんて容易ですよガープ中将」



処刑台に新たに姿を現した大女の存在に海軍と海賊がざわついた
注目の的になっている本人は至って無表情で、その姿が見る見る薄れていくのをエースは信じられないような目で見つめた。能力者だったのだ、この大女は
自由になった両手で、思わず消えかかっていたナマエの腕を掴んだ



「何で、おれを助けたりしたんだ」
「エース、それは…」
「ジジイには訊いてねぇよ!」


ガープに噛み付いたエースの言動にナマエは無表情のまま「ふふふ」と笑った。これがナマエの笑顔だ。笑われたエースの腕をそっと放す



「…………エース、お前は生きるべきなんだよ。死んで花実が咲くものではない。死んで何かを生むわけじゃない。そんな男に、お前はならなくても良いんだ」
「…?何のはなしだ…?」
「私はあの男は大嫌いだけど、姉さんとお前は大好きなんだ」
「姉さん…?あんた、まさか、」
「……とても似ていないしとても年のとても離れた姉妹がいた。妹は姉が大好きだった。その子どもも守りたいと思っていた。

それだけだよ」
「………、……」



さぁお行き、お前の弟がもうすぐそこまで来ている
でもここは危ないからね、途中までは私が運んであげようかね



「エーーーースーーー!!!」
「! ルフィ!!」



「…元気いっぱいだこと」
「…ナマエ、お前は死ぬつもりなのか?」
「……センゴク殿にまでそう言われるのなら、殺されるのだろうね私は」



何も家族の情に流されたのは、ガープ殿だけではないんですセンゴク殿



「さぁ2人とも、再会の喜びは後で交わしなさい。掴まって」
「え?オバサン誰だ?」
「…失礼な子」



エースとルフィの2人を両脇に抱え、ナマエは処刑台の上で立ち上がる。
巨大な彼女の体はすぐに海軍たちの格好の的になる。その、飛び掛う弾丸を避けるように、ナマエとエースにルフィの身体はどんどん薄れて行き、ついには目視出来なくなる。それに慌てたのは一般兵達と海賊だけで、ナマエの能力を知っていた将校達は慌てて「場を見渡せ!次に現れた瞬間を狙って撃て!止めろ!」と指令を行き渡らせる
"ウスウスの実"――自身と、自身が触れたものを薄れさせる能力。薄れさすのは実体、影を問わず消失している最中はどんな攻撃も受けぬし触れもせず見えもしない。非常に厄介極まりない能力だった


エースと麦わらの姿が消え、ざわつく海賊と海兵達の間を通り抜け、次にナマエが姿を現したのは大胆にもモビーディック号の船首、白ひげのすぐ横だった



「………ふぅ」
「…!いつの、間に」

「っオヤジ!!」
「エース!」

「うおお!?すげぇっ!オバサンすげぇ能力だなそれ!」
「…そう?」



エースが、白ひげの元に戻ってしまった
こんな事が、あってはならない



「決して!逃がすな!!」


「は、はい!!」



赤犬に鼓舞された海兵たちは、わあ!っと武器を構えモビーディックを襲う
マリンフォードに降り立っていた白ひげのクルー達を呼び戻し、ニューゲートは逃走を図る

しかし逃げる者と追う者とでは、明らかに白ひげに勝敗はなかった



「仲間は集め終えれたか白ひげ」
「あぁ、何者かは知らねぇ者よ。何をするつもりだ」
「私の能力でお前たちを逃がす」


船に触れれば、船の陰を薄く出来る
そうすればこの船は海軍の追撃を避けて逃げられるよ


「ま、待て!あんたはどうなるんだよ!」
「どうもしないよエース。食い止められるだけ粘ってみるだけ」



ここで死のうとも、亡くなった姉との約束が守れるのだ




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