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▼ されど夜は過ぎる




一仕事終えた感が尋常じゃなかった
異常なまでに酷使した精神を休める為に主に口早に失礼する旨を伝えて自室へまで引き返してきたは良いが、先ほどの光景を脳が勝手にリピートしてしまって休まれるどころの話ではない。脳内の映像はまずクロコダイルの顔から始まり、その視界は徐々に下へと下がって行く。首元を通過した時点で既に動悸は激しくなった。自分のソレよりも逞しく鍛えている胸板の更に下へ、下へ、したへ……うおおおおお止まれやめろ自分ー!!!





「ナマエ」

「うわああああああっ!? はいっ!?」



身体を飛び上がらせながら返事をしたナマエに向かって「ハッ無様だな」とわらうクロコダイルの顔は蒸気しどこかツヤツヤでなんか楽しそうだ。あのクロコダイルが己の利益になる事以外で笑みを見せるなんて何が起きてしまうんだ恐ろしい…!とナマエは自分の肩を抱きしめる
それでも一応、使用人としての意地と根性で命令が下るのを待つ姿勢でいることはやはり誰かに褒めてもらいたかったりする




「な、なんでしょうかクロコダイル 先ほどの件で何か失礼なことをしでかしてしまいましたか」
「…クハハ、 先ほど、ねぇ…?」
「さき……ほど……」
「 先ほど 」
「………さき…」





ああああ映像が!フラッシュバック!巻き戻し再生停止!!
クロコダイルも人が悪い!「先ほど」と動く唇は何故そうも蟲惑的に動いたりするのだ!嫌が応にも当人のせいによって繰り返し思い出される出来事にナマエの顔は赤くなったり青くなったりと忙しない。
そんなナマエの様子を見て、クロコダイルはクハハハと高笑いする。その姿は、完全に遊んでいた。この男をからかうのが面白い。あたふたと惑う様を見ているのが愉快でたまらない。そう考えるようになってしまったのはいつからだったか。年月に頓着のないクロコダイルは、いちいちそんな事まで覚えたりしない。ただ、ナマエが初めてクロコダイル邸にやって来た日の事だけは鮮明に覚えている。ガチガチに緊張し、初っ端の挨拶の言葉から噛みまくっていた。どん臭い男だ殺すか、とも思ったが、あの時殺さないで正解だった。クロコダイルは、見ていて飽きないモノが大好きだったから





「……そんなに気に入ったか」
「いいいいや!いえいえいえいえ!そんな!」
「なら、明日も手伝わせるか」
「ノー!ノーですサー!」
「そうか嬉しいか」
「ノー!!」



大きく手を左右に振って、過去ないぐらい命令拒否をするナマエの頭に大量の砂を被せた
「!?」自分の身に何が起こったかを判断するのに一拍置いたナマエが、すぐに何事かと理由を問い質す



「不愉快か?」
「、ま、まぁ」
「嫌なら素直に言うことを聞くんだな」
「…………」
「返事はどうした」
「しかしクロコダ、」
「返事はイエスかはい、だ」
「……いえーす」



それでいい。満足そうにまた笑ったクロコダイルは、上に羽織ったガウンを翻してナマエの使用人部屋から去って行った。


後から冷静になって考えてみれば、主人である立場のクロコダイルが使用人部屋に押しかけて来てまで言った命令がアレだったことに、そこに深い意味があるのかを察知できないでいるナマエには到底理由も解りそうになかった
ただ困惑をし続ける。ああ、明日の風呂の時間がおそろしい





▼短編@シャワー室の前の妄言 続編/やまさん
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