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▼ 夜更かしの恋人たち

「ナマエ」



シッケアール城の夜はとても暗い。壁に取り付けられた装飾蝋燭の明かりが毎晩ナマエの手によって火を灯され、その明かりがなければ廊下と壁の境目も分からなくなるほどだ
その暗い廊下をミホークは夜着のまま歩く。隣の隣にあるナマエの部屋の戸をノックするが、返事はなかった。あれ、と思いつつ階段を下りる。
小腹が空いたから何か一品夜食に作ってもらおうと同居人の姿を捜している最中だった

自室、いない
洗面所、いない
風呂場、いない
窓の外、いない
渡り廊下、いない
玄関、いない
キッチン、いた



「ナマエ」



もう一度名を呼ぶがやはり返事は返ってこない。よく目を凝らしてみれば、ナマエはキッチンの大きなテーブルに突っ伏すようにしていた。寝ているのだろうか。物音を立てないようにナマエに近付き、顔を寄せて呼吸を確かめる。規則正しいリズムで繰り返される呼吸音が聞こえて来た。どうやら寝ていたらしい。こんな場所で、作業着のまま。暖房設備などないこの寒い部屋で眠るのは賛成しない。体を冷やせば体調は崩れる。



「ナマエ、起きろ」



揺すってもくぐもった声を出すだけで起きる気配を見せない。それでも暫く声を掛け続けていたが、今日はよほど辛い力仕事でもあり疲労しきっているのか、深い眠りに就いているようだ

ナマエは大柄だが、ミホークの力を持ってすれば持ち上げられないこともない。
自室に運んでやろうかと考えたが、もしかすればナマエがこのキッチンで仮眠を取り、また次の仕事に戻ろうとしているのかもしれない。そうなると、自室のベッドに連れて行けば、そのまま朝まで彼が起きることはないだろう。となれば、寝過ごしたナマエがまず怒るのはどうして自分はベッドにいたのかと言うこと。連れ帰ったミホークが叱りを受けるやもだ。

このまま此処で寝かせておくか…
そう考えたミホークだが、いやならばガウンぐらいは被せておいてやろう。と考え、すぐに私室へ取りに行った



「………」



取りに行ったガウンを余分に2枚、肩の上から被せてやる。それでも身動き1つしないナマエの顔を見る。やはり、疲れているようだ。この巨大な城の管理を一手に担い、家事や炊事もこなしているのに、恐らく一日に背負う疲れと一日に癒せる疲れの比率が合っていないのだ。普段の食事の際にはナマエの向かいの席に座るミホークは、今はナマエの隣の席に腰掛けて寝顔をじっと見つめる



「…………いつも、すまないなナマエ」



無意識の内に口から出た言葉は、素直な謝罪だった
いつも何かナマエの手伝いをしようか、と考えてはいるがいつも考えるだけに終わる
だがナマエは何も言わないし、ミホークが自分を手伝う日が来るなんて夢にも思っていないのだろうが



「………は!!」
「!!」


「寝てた……って、あ?ミホーク?お前そこで何して……あ」
「…お、起きたのか…」
「すまん、仮眠のつもりだった。 このガウン、お前が掛けてくれたのか?」
「あ、あぁ……余計だったか」
「まさか。 ありがとうなミホーク」



"ありがとう"


そうか、
謝罪より前に、伝えるべき言葉があるではないか



「ナマエ」
「何だ?」
「いつもありがとう」
「………良いってことだ」



一瞬ポカンと呆けたナマエだったが、何の心境の変化か珍しく素直な同居人に笑みを返す



「お前が素直だと調子狂うな。下手に出て何が望みだ?夜食か?」
「……ああ、そうだった。それだ」
「はいはい、ちっと待ってろよ」



肩に掛けられていたガウンを一枚ミホークに掛け、もう一枚は自分の袖に通したナマエは
「よっこらせ」と声を上げて椅子から立ち上がり、キッチンの明かりに火を灯す



「要望はあるか?」
「……何でもいい。任せる」
「それが一番困るぞミホーク」
「本当に何でも構わない。全部美味しい」
「………悪いモノでも食ったかミホーク」



業務用サイズの冷蔵庫を開き、中の食材を確認しているナマエは楽しそうだった。さっきまでナマエの表情に見えていた疲労の色は、だいぶ薄れたように思う。ミホークも、緩く口元を上げた





















「な、なぁ、今こそ出てくタイミングじゃねぇか?」
「じゃあお前から行け」
「なにっテメェが行けよバカ!」
「早く行ってリクエストしねーと」
「わ、分かってるよ!」







▼Family Boss@主とミホークがいちゃいちゃしてるところをゾロとペローナが目撃/ゆきさん
リクエストありがとうございました!


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