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▼ 僕は拍手と喝采を、そして愛を

「キラーはまだかまだ帰ってこないのかユースタスの」
「るっせぇな、もう少しで帰ってくんだろ」



船に上げたのは今回も間違いだっただろうか
キラーの兄のコイツは、イマイチおれに馴れ馴れしいところが気に食わない
バタバタ、と慌しい足音を立てながら、見回りに行っていた奴が帰って来た音がしたので
ここからはソイツに任せよう。キッドは挨拶もせずに席を外した。入れ替わり立ち替わりで今度はキラーが船室に現れる



「兄さん! いつの間に船に来てたんだ?」
「つい今しがただキラー 元気そうだな」
「ああ、兄さんこそ。変わりないようで安心した。今日はどうしたんだ?」
「お前の顔が見たくなってな」
「…っ、兄さん……!」



熱いハグを交し合い、「おれも…!」と返答するキラーのフカフカした毛を撫でながら「そうかそうか」とナマエは笑った。皺の目立つ顔には、疲労の色が伺え、キラーは心配になる



キラーがキッド海賊団に引き抜かれるまで、
育ててくれた婆さんが亡くなってからも2人で生き抜いてきた。
兄は弟の為に金を稼ぎ、弟は兄の為に金を稼いだ
兄が山賊達の手によって手足を折られて何とか帰って来たなら、弟は山賊達の根城に乗り込み山賊全員分の四肢を叩き折ってきたし、
弟が海賊達の手によって顔を焼かれて痛みに悶え泣くことがあれば、兄は海賊船に乗り込んで海賊全員分の身体に油と火を放ってきた

兄弟で違う稼業になるとは言ったが、お互いの仕事に干渉しないとは決めていない


兄は弟が大事だったし、弟は兄が大好きだった。この世の誰よりも




「とうとう"新世界"に入るのだと聞いたが、本当か」
「…ああ」
「また随分と遠く離れることになりそうだな」
「………兄さんも、共に来ればいい」
「それは言っちゃあいけないって、兄さんとの約束だろキラー」
「ごめんなさい…」




干渉はするが加担はしない。うん、分かってるよ兄さん



「お前は広く青い海を行け。オレは大地にしっかりと足を付けて、ずっとお前を見守っている」
「……分かった。 兄さんももう歳なんだから、本当に気をつけてほしい。前みたいに目を抉られたら、もう両目が開かないぞ」
「まだ右目が残ってるからな。潰れるまでがんばるさ」
「…………ほんとうに、気をつけて、兄さん。おれを置いて、逝ったりなんかしないでくれ」
「勿論だ。可愛い弟を置いて、誰が逝くか」



じゃあなキラー、ユースタスのにはヨロシク言っておいてくれ。 途中まで見送ろう。 おおそうか、ありがとう



隣を歩く兄の傷だらけの身体を見る。傷の上から傷を作り、潰れた肉刺の上に肉刺が出来る
そんな兄の姿が痛ましく感じるのと同時に、どうしようもない愛しさにキラーは襲われるのだ。どれだけ力をつけても敵わないものに



「 …大好きだ、兄さん」

「 オレもだよ、キラー」




お前が全てを手に入れたその時、また会おう兄弟






▼短編@あわよくばの末路 ifでブラコンなキラー/PANDAMさん
リクエストありがとうございました!


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