▼ 包み込むように、そっと
「ナマエ、怪我は無いか!」
「私、ずっと船室にいたのよ?怪我なんてする筈ないじゃない」
「そんなの分からねぇだろ、いつどこで傷を作るかなんて」
「……」
17年前はこんな過保護な性格の子ではなかったのに、一体どうしてしまったのでしょうか
戦闘中、危ないからと船室にて軟禁され、ドアの前には鼠一匹寄せ付けない警戒体制を布いてあると言うのに怪我なんてする筈もありません。この子が医者であることを除いても、心配のし過ぎのように思います
「ロー、私は大丈夫だから」
「……女のナマエを男のおれが心配するのは当然だ」
「心配は嬉しいのだけど、そのせいでローが怪我をしてしまったら私が悲しいわ。ね?」
「…わ、分かった」
トラファルガー・ロー
19年前に突然家に現れた当時5歳のこの子を助けたのは私
年月が経ち、先日、この子がまた私の前に現れた。いえ今回は、私がローの元に現れたと言うべきでしょうか
色々驚いたことは多々ありますが、不安に思ったことはありません。こうして、ローが私を甲斐甲斐しく気にかけてくれるのです
「ナマエ、こっち来て料理の手伝いしてくれや」
「はい、今行きます」
ハートの海賊団の皆さんは本当に優しい人たちばかりです。全部ローの教育が行き届いているのでしょうね。みんな、齢38のただの女である自分を"海賊船上の役立たず"にしないように仕事をくれるのです。時には掃除、時には料理。本当にありがたい
「ちょっと来てくれナマエ」
「え?でも手伝いを…」
「今日はいいから。早く」
「はいはい」
強引に引っ張る手には覚えがあって、思わず笑ってしまいます
船室に呼ばれ、扉を閉めてどうしたのかと問う前にローの大きな身体が飛びついてきました
「あらあら ロー、どうしたの?」
「……沢山動いたから、疲れた」
ナマエの元に海賊達を寄せ付けないように、普段の数倍動いた。頑張った。そしたら疲れた
「無茶はしなくても良いのに……それで?私はどうしたらいいのかしら」
「昔みたいにおれを抱いて一緒に寝てくれりゃあ良い」
「……こんなオバサンと一緒に寝て、嬉しいの?」
「ナマエならな」
そうまで言われては仕方がありません
大きなローの身体をベッドの方へ誘導して、柔らかく腰掛けて膝枕の姿勢を取った
「どうぞ?」
「…遠慮なく」
帽子を脱いでナマエの膝にそっと頭を乗せたローは、そのまま瞼を閉じた。どうやらこのまま直ぐに寝てしまうつもりらしいです
よしよしと頭を撫で、
大きく成長し、すっかり青年の顔つきになったローの顔を見てナマエは母のような気持ちでいる
寝てしまおうとしていたローの意識を無理矢理引き止める。ゆったりとした時間は久しぶりだから、何となくローと話をしていたい気分でした
「それにしても大きくなったわねぇ ロー」
「……そりゃな」
「すっかり格好良くなっちゃって」
「…そう、思うか」
「ええ こんなに格好良いんだもの、きっとローならすぐに可愛いお嫁さんが見つかるわ」
「……………………」
「もしかしてもう綺麗な恋人さんが居たりするのかしら?」
「……………………」
「そうよね当然よねぇ、ローはこんなに格好良いんだもの」
「……………ぐー」
「あら、どうして寝たフリをするのロー?」
おばさんのコイバナには付き合ってくれないのかしら?悲しいわぁ
▼恋情増幅@IF もし主が女だったら/左目コンタクトさん
リクエストありがとうございました
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