恋情増幅 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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「思い出せる限りでいいから絵を描けコック!」
「ど、どんなったって…!」



ベポが汲んで来てくれた水を喉に流し込んで、俺が食べた悪魔の実の形をコックから調べ出そうとしているローの姿を見る。まだ少し後味が残っていて口の中が酸っぱい。酸っぱ苦い。「気分はどうトリトさん?」心配してくれるベポに「だ、大丈夫だよ」と答えるので精一杯だ。いま、凄く体が重たいのだ。一度体が透明になってしまう前の時よりもだるく感じる。何故だろう。――悪魔の実を食べたことによって何らかの能力を授かった重みが、体にプラスされていると言うことだったりするのか?



「こ、こんな感じだったかと…」
「…………」



コックが必死に思い出して紙に描いた実の姿を見たローは、ペンギン君を呼んですぐに調べさせた。いつもの顔より数倍険しい顔をしてズンズン近寄ってくるローが何故だか恐ろしい。今から怒られるみたいだ



「具合は」
「だ、大丈夫だ」
「体に違和感とかあるか」
「平気、です」
「気分は」
「も、問題ないです」



傍で様子を見守っていたバンダナ君とシャチ君の二人が「こんなラッキーってあるんだな…!」「トリトさんの持つ生まれ持っての幸運とかじゃね…?」と話しているのが聞こえる。ローの命令により他の海賊団の事や流通経路を調べていたクルーの皆もあまりの早い解決にああだこうだと議論し合っていた。
何を言うにも、当事者である俺が一番現在の状態を信じられていない。
悪魔の実とは、こんな簡単に手に入ってしまうものだったのだろうか。
と言うか、俺の食ったあのフルーツは本当に悪魔の実なのか。単純にとても不味い味の果物だったと言うだけの話だったり…



「ありましたキャプテーン!」
「合致したか!?」
「図表と名称だけ載ってました!効果とかは全然記載されてません」



船の資料室から一冊の図鑑を持って飛び出して来たペンギンの手からそれを奪い取り、内容に目を通したローははあと嘆息した。「図と名前だけか…使えねぇ」そう言って俺に図鑑を投げ渡してくる



「…コックの描いた絵が間違いでなければ、トリトの食った果物は間違いなく悪魔の実だ」
「そうなのか…本当に食べてしまったのか」
「おれの仮定も正しかったみたいだな」



――悪魔の実を食せば、実の能力はずっとトリトの体内に残り留まることとなる。そうすればトリトの"コッチの世界"での存在が、また確かなものとなるかもしれない



「………"ホミホミの実"…?」

それが名前らしい。イガイガした形に、表面には渦巻きの模様 禍々しい見た目だ…

「名前からじゃ能力を察せねぇな… どうだ?使えそうか?」
「いや、全く分からない。どうすればいいんだ?」
「おれの時は物心ついた時からだから、どうやれば良いかなんて、どう伝えりゃいいか…」
「……ああでもな、一つだけ変わったようなところがある」
「どこだ?」

「視力が良くなった」




「………視力?」ローもクルーの皆も、一様にポカンと首を傾げた。

老眼の兆しを見せていた自分の目が、やけに広く見渡せるようになっている。いや、視力どころか視界の範囲も大きくなったように思う。



だからどうしたと言われれば、 分からんと答えるのだが






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