恋情増幅 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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勿論、"悪魔の実が"どんなモノであるかは知っている。
その実物を見たことはないが、本で、図鑑で、話に聞いて、知識としては頭に入っていた。どれだけ希少で、どれだけ貴重なものであるかも


それを食してみないかと、ローはトリトに持ちかけたのだ





「悪魔の実、をか?どうしてそこに、トンデモな実が現れたんだ?」
「おれも確証はない。が、悪魔の実は、当然だがコッチの世界にしかない代物だ。…そう、だよな?」
「ああ。40年あっちで生きていたが、見たことないな」
「だろ? つまり、悪魔の実はコッチの世界の産物なんだ。…まだおれの言いたいこと伝わんねぇか?」
「いや、察せたよ。 つまりローはこう言いたいんだろう?」



――悪魔の実を食せば、実の能力はずっと俺の体内に残り留まることとなる。そうすれば、俺の"コッチの世界"での存在が、また確かなものとなるかもしれない、と




「そう言うことだ まあ、全ては憶測に過ぎないわけだが…」

何からでも試してみたって、バチは当たらないよなぁ?とローは得意げだ
その姿に、トリトはまた小さく笑みを零す。
自身の身体が薄ぼんやりと消えかかっていて尚、こうも平然としていられるのは何も前例がいてそれを見ていたから、だけではない。
ローが、少しもトリトと言う存在を諦めずにいてくれるからだ



「……ありがとう、ロー お前がいてくれて良かった」
「な……、ま、まだどうなるか決まったわけじゃない。それに、トリトが食い物を食べれなかったら、全てがオジャンになる話だ」
「食べられると思う。頑張れば、モノは掴めるしな」


ローの部屋の机に置かれていた医療本を手に取ってみる。通常の三倍程度の握力を使えば、手に持てないこともない。
口の中を触ってみたが、異常はない。…食道さえ通っていれば、問題ないだろう



「…それに、これでまたトリトに恩返しが出来るのかもしれないと思うと、やる気も上乗せだ」
「恩返し?…ああ、17年前のことか?」
「そうだ。絶対に放したりしないからな」
「…はは、愛されすぎていて、嬉しくて涙が出る。俺はお前に愛されているんだな、ロー」
「…とーぜん」












「……て訳で、トリトに食わせる悪魔の実を探すことに目的変更とする」
「了解です!優先的に見つけたい能力の種類とかありますか!?」
「この際種類は問わねぇことにする。今はトリトもあんな風にピンピンしてるが、いつまた危うくなるか分からない。急ぐぞ」
「アイアイ!」



別班として行動していたベポが「トリトさあああん!おいたわしいお姿にいいい!」と突撃してきた。トリトは受け構える体勢でいたのだが、ベポの身体はトリトの身体をすり抜け、後ろにいたシャチの方へと勢いよく突っ込んで行った



「ペンギン、至急他の海賊団の情報を探れ。どっかの奴らが新しい悪魔の実を見つけたなんて情報が転がってねぇか、調べるんだ」
「了解!」
「キャプテン!島探索中に、食用となりそうな食べ物を幾つか見つけて来ましたがどう致しましょうか?」
「量はどのくらいだ?ログが溜まるまでの分は確保出来たのか」
「コックの話では3日分ほどです。ただ、もう少し奥へと行けばまだ色んな果物があるようです。あと、角の生えた猪を三頭とっ捕まえてきましたが、充分食べられる肉だと言うことです」
「そうか…分かった。後で確認しておく。近海に海獣の姿はないか、探査に回れ」
「了解!」



ベポによって押し潰されたシャチの身体をどうにか救出しようと試みたが失敗に終わった。「何すんだベポこの野郎ー!」「ごめーん!!」と騒ぎ出した二人に、ローの強い叱責が飛んだ。




「ロー、俺も何かしたいのだが」
「…何するつもりだ」
「透明な身体を活かして島の探索に赴こうか?」
「却下だ 一人で行って、その間に消えたらどうする。呪うぞ」
「しかし、俺だけ何もしていないのは皆に申し訳ない」
「……じゃあ見張り台に上がっての見張り番だ。誰か一人横に置いておけよ。一人でいるのは駄目だからな」
「…譲歩、ありがとう」






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