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何が起きたのかは一瞬で分かった。
隣に立っていたローが、ばたりとトリトの胸に倒れ込んで来たのである。


「…ロー!!」
「キャプテン!!」

「…はぁ…は、平気、だ」


だがローの顔は酷く汗ばんでいる。自身の能力により、巨大な潜水艦を見えていた島の近くまで長距離に移動させたのだから無理もない。
ローはトリトの腕に寄りかかりながら、「モタモタ、するな 追いかけて来ない内に、早く島へ船をつけろ」と命令する。 は、はい! 急いで伝令に向かったクルー達の後ろ姿を目で追いかけながら、トリトはローの背中を摩りつつ顔色を窺う


「…大丈夫か、ロー」
「……」
「…でもないみたいだな」


よいせ。脱力し切っているローの身体を背中に背負う。砲身の点検と、補充確認等はローを船室に連れ帰った後にやっても問題はない筈だ。
ぎゅっと首に柔らかく回されたローの腕を叩き、「梯子登るからしっかり掴まってろよ?」と声をかける。背後で頭が上下したような感触があった。トリトはもう一度ローの身体を抱え直し、甲板へと上がる梯子に手を掛けた









「……これが、見えていた島、か?」
「………」


海底から浮上した船の甲板から外の景色を見る。遠く見えていた島影の全貌が明らかになり、そしてその島は見事なまでに


「…ジャングル、じゃねぇか…」



奇妙な動物の鳴き声が聞こえて来る。
見た事もないような植物が生い茂る島の入り口の前に、何とか船を停泊出来そうな岸があったのが何よりだ。が、


「…この島で、物資の補給は出来るのかい?」
「いや……これはムリなんじゃ…」


隣であんぐり口を開けていたペンギンも苦笑いで答えるしかない。航海士班も同様で、航路を読み間違えたということもなさそうだ。


「……とり、あえず、一通り見回って、問題ない、ようなら、このままログが溜まるまで、待機だ」
「分かりましたキャプテン!」


降りる、と足を動かしたローに「歩けるのか?」と訊ねながらも甲板に下ろしてやった。少しまだフラついている様子だったが、「おれも島に降りねぇと、状況把握が難しくなるだろ」とのこと。それは確かにそうかもしれないが、おれはお前が心配だよ、と伝えてみる。照れは貰ったが、休んでいてはくれないようだ


細かい砂利、のような砂、を踏みしめて地面に立つ。その感覚でさえもういつぶりだろうか。
「…お、おい、何かヤな鳴き声聞こえね?」「聞こえる……やばい…」おっかなびっくりしている者たちに優先的に火の灯った松明を渡すことにした。
グランドラインに生息する動物がこんな火なんかで怖がるだろうか…と不審に思いながらも、トリトも松明を受け取る



「…では、頼りなく感じるかもしれないが、僭越ながらローの警護にはオレが就くことになった」
「……なに言ってんだか。…早く行くぞ、トリト」
「おいおい、お前が一番前に出ては意味ないじゃないか」
「そ、そうですよキャプテン!」
「お、おれらも一応いますんで!」



船を基準に四方へと探索組が散開して行く。
トリトとローが加わるチームはど真ん中を突っ切るルートになった。同伴者のシャチとペンギンはビクビクしながらもちゃんと一番前を歩いてくれている。トリトはローの後ろ、つまり最後尾を歩きながら、実は内心とてもビクビクしていた。





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