「アイツ等にレクチャー付けてもらえたか?」
「あぁ。これからも時間を作って見てくれるらしい」
「船大工の勉強に続けて狙撃の勉強か…大忙しだな、トリト」
「すごく楽しいさ」
「なら、おれもいい」
自分も難しそうな分厚い本を読んでいると言うのに
そんなローに勉強大忙しだなと笑われては、少し恥ずかしい思いをしてしまうじゃないか
海底の中では空の明るさが窺えない。船内に取り付けられた時計によれば、日付を回った頃らしい。明かりを抑える為にランプの火だけが揺ら揺らと揺れるローの船室
遊びに来た、逢瀬にきた、と言う理由はなく足を運んだが、
ただ何となくで訪れたトリトの姿にローは喜ぶから敢えて理由を付けなくてもいいようだ
ガンズたちが造ったこの潜水艦 耐圧殻は分厚く、
海王類や海獣たちの姿を認識する為のレーダーもさっき見てきたが凄かった。
ヤマトの内部みたいだった。すごかった
「もう、"偉大なる航路"のどれくらいまで進んでるんだ?」
「航海士班が言うには、あと1つ大きな島を越えればシャボンディ諸島に着く」
「シャボンディ?」
「…また明日その島のことを教えてやる。もう寝よう」
「そうか。じゃあまた明日な、ロー」
あまり遅くなっても、大部屋の皆に迷惑が掛かってしまう
潜水艦になり、新しく増設された大部屋の一室が今度のトリトの部屋だ
同室を希望していたローには申し訳ないが、一応の境界線は引いておかないと他のクルー達に申し訳が立たなくなる、と言うトリトの提案を渋々受け入れてくれたのはいいのだが、
「………」
「…服は引っ張らないでくれ。伸びる」
「…帰んな」
「寝ないといけないだろう」
「この部屋で寝ればいいだろ」
「そう言って昨日もココで寝たんだぞロー」
「じゃあ今日もだ」
「おいおい…!」
力強くトリトの手を引いて、ローは自身のベッドにゴロンと横になった。
しょうがない、と息を吐いて折れたトリトは、ローのベッドの脇に腰を下ろして横になっているローの髪を梳くように撫ぜる
「お前が眠るまでココにいよう」
「……不満だ」
「また起きた時に顔を合わせればいいじゃないか」
「…トリトがクルーとしての働きを覚えてきたから、ほったらかしにされてる」
「した覚えはないが…。 まあ良いから、さぁ寝なさい」
「………トリトのばーか」
棄て台詞にしては可愛らしい言葉を残し、ローは目を瞑った。
すぐに寝息が立ち始めたのを見て、トリトはやはりなと思う。眠たがっていたのだから、大人しく寝ればいいんだ。どうせまた数時間もすれば、顔を見れる
「…おやすみ、ロー」
手をそっと放し、なるべく音を立てないように船室を後にした
トリトが大部屋に戻れば、待ち構えていたクルーの面々はニコニコと笑ってくる
それに対しトリトは「…笑ってくれるな」と笑った。「眠りましょーか、トリトさん」「明日も早いですぞー」それに返事をし、トリトはもう慣れたハンモックの上に横になった
目を瞑れば、海の音が聞こえてくる。静かな暗い海の中
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