恋情増幅 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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「ガンズさん、本当にお世話になりました」
「弟子の船出って感じだな、 しっかりやれよトリト」
「はい」



硬く交わされた握手に応え、解いて手を振った。何から何までガンズさんには世話になった。詰め込んだ船大工の知識は、これからに充分役立たせて行くつもりだ。


いつまでも別れを惜しんでいたのが気になったのか、ローに脛を蹴られて催促される。
今行く、と笑い自分の分の荷物を担いで船に上がった。

オレが足を付けるのは初めてだ。これが潜水艦。海に浮かんでいる感覚は前の船とも同じだが、湧き上がってくるワクワク感は気のせいに出来ない



「全員いるか?」
「点呼ォー!」



いち!に!さん!と順番に名乗り上げて行くクルー達の姿
航海士と2人で次の航路を話し合っているローの姿
船着場から手を振ってくれているガンズさんと他の大工の方々に、もう一度大きく手を振った




「船を出すぞトリト いいか?」
「ああ、いいぞ」




窺うように確認を取ったローに頷いて、オレも船蔵に向かった。積み込んだ荷物を整理する手伝いをしないといけない。
ガンズさん達はここで見納め。
またいつか、会える日があることを願って



「出航!!」
「「オー!!」」




ローの号令と共に、大きな船体をした潜水艦は動き出す。
「おぉー…!」「すげぇこれ…」と感動している皆と一緒になって、船縁に引っ付いていると直ぐにローから次の号令が飛んだ




「お前ら何やってる!これから潜るぞ、溺れたくなけりゃ中に入れ!」




そうだ、潜水艦は、潜るんだった















「…トリトさん……やーばくないっすか…これ……」
「ああシャチ君……大変だなこれは…」




船荷の整理をしなければならない のだが

それよりも窓の外に見える深海の様子に心が躍って仕方ないのだから捗らない



「ローも、感動してるんじゃないか?」
「ぜったいしてますよ!キャプテンは能力者ですし!」



船長室からローも同じように小窓を覗いてるだろうか、と考え
想像だがその可愛さにニヤついてしまった。危ないあぶない





――ハートの潜水艦は、次の"偉大なる航路"の海を行く





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