恋情増幅 | ナノ
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そして、ハートの海賊団がこの島に身を置いて早数ヶ月と数日

ガンズを始めとした腕利きの職人たちの手によって、軒並み早いペースで完成したハートの新しい船に、一同は喜びの声を上げた



「せんっすいっかん!」
「かぁっけぇー!」
「潜る?これちゃんと潜るんですか!?」
「でっけーなあ!前の船の何倍だこりゃ!」


完全な姿を見せ、ドックに釣り上げられている潜水艦
側面に刻まれたハートのジョリーロジャーはガンズさん達からのサービスだった。潜水艦に帆は張れないから、ここに付けてくれたらしい


「ありがとう」
「なぁに、仕事だからな」


ローのお礼に、笑って首を振ったガンズ
「まだ中には入らねぇでくれよ。着水させねぇといけねぇからな。後2日はまだ島にいてくれや」と言う言葉に、ローは頷いた




その日の夕方、
数ヶ月間、ガンズの元で船大工の勉強をきていたトリトは使っていた資料を返そうと島の図書館に来ていた。完璧にとは言えないが、教えられるだけのことは教わったと思っている。出立の時に改めて礼をしよう、と考えた



「ロー、お前も本を返しに来たのか?」
「トリトとのデートのついでにな」
「そうか」



恋人になって、それからこの数ヶ月間、トリトとローの間に何か起こったかと言われたら劇的な事は何も無かったと言おう。しかしそれをローが不満に思っている事はないらしく、トリトの近くにいるだけで存外楽しそうに笑っていた。噂や見た目に反して、ただ傍に居てくれるだけで満ち足りているようだ。
それをトリトが笑って指摘してやると、「…勝手な先入観抱いてんじゃねぇよ」と窘められたのも記憶に新しい



立ち寄った図書館に本を返却し、
最後だから、とローと共にあまり回らなかったコーナーの本を手に取り合っていると、「トリト、これ読んでみろ」とローが一冊の航海日誌のようなものをトリトに見せて来た


「なんだ?これは」
「ゴールド・ロジャーの事について書かれた記事だ。あまり知らないんじゃねぇのか?こいつのこと」
「ああ。話にはよく聞くが、あまり知識はないな」


渡された記事は、新聞紙を折りたたんだような厚さでゴールド・ロジャーの航海中の話や見聞きしたモノのこと、噂など信憑性がマチマチな内容が何段かに分かれて書かれている
ローはこれを読んだことがあるのか?と問えば、ないらしい。クルーたちの情報や船の外装なんかが記されたページを過ぎ、次の項目に目を走らせていたトリトが「あっ」と声を上げた
なんだ?と近寄って来たローに、トリトはこれ!とページを見せる
そこに書かれていたのは、ラフテルの謎



「"ラフテルを取り巻く周りの海には
時空の歪みを発生させる海域があるらしい。
そこに運悪く足を運んでしまった船は消え、
しかしゴールド・ロジャーはその歪みの海でさえも渡り切りラフテルを見つけた…"」



「……」
「…なぁ、ロー オレ今考えた事があるんだが」
「…言ってみな。大体見当は付いてるけど」


「この海に辿り着けば、オレは元の世界に帰れるんじゃないか?」



これだ。この記事を読みながら頭の中に浮かんで来たこと
トリトのいた日本のある世界に、歪みに乗じて戻れるのでは、と



「…だがその話自体が眉唾モノだ。絶対と言うわけじゃあねぇ」
「それもそうだが…しかし手がかりらしい手がかりが他に見当たらない」
「…………トリトは、帰り、たいのか?」
「え?……あ、あぁ、いや。うーん……」
「バカ。どっちなんだハッキリしろ」




パッとトリトの手から記事を奪い、元の欄に戻したローはサッサと歩き出してしまった。慌てて後を追って、隣に立つがローの顔はすっかり不機嫌に
考えなしに帰ることを口にしてしまったのは謝る



「…勿論、ローも連れていけるなら連れて帰りたいよ」
「……トリトの世界は、海賊なんか出来ないだろ」
「ロー、そんなに海賊をやるのが好きなのか?」



口から出たのは素朴過ぎる疑問
トリトの目には、ローがあまり海賊と言う生業を楽しんでいないような気がしたからだ

トリトのその言葉を聞いて、ローは口を噛んだ。頭を駆け巡ったのは憎い"アイツ"の顔



「……まぁ、おれは一つなぎの秘宝を見つけるのが目的だからな、もしそれを成し遂げたら、トリトに付いてく気に大きくなってるかもな」
「大きく?」
「おれがトリトの隣にいたいのは、もう当然だってことだ」
「 そうか!」


それを聞けて、とても安心した




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