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「#幼馴染」のBL小説を読む
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トリトは何故自分なのだとローに問いたい
言ってしまえばただの"肩車"なのだが、それをどうして自分がやってあげているのか?
ベポに頼めばいいじゃないかとローに進言してみるも「いやだ」と聞く耳持たれず、
「しゃがめ」と命令され納得の出来ないままにローを肩車して、ローの医務室の上に設えられた戸棚の中の薬品整理に手を貸していた。何だこの状況は


「……ロー、あとどれくらい掛かる」
「もう少しだ」
「な、なるべく急いでくれ、オレの足腰を痛める」
「そしたらおれが治してやるよ」


そう言う問題じゃない!
ローの自由な発言に噛み付くも、彼の手元が狂わないようにしっかりと床に足をつけて持ちこたえてやっているトリトの姿は、同じく船内整理に精を出すクルー達の目には「キャプテンの尻に敷かれてる(今は文字通り)トリトさんて新鮮!」とまるで他人事に見られているのだから助けも期待出来ない


完成半ばの新しいハートの船に移る為の、謂わば引っ越し作業をハートの皆でやっている所なのだが、些か気が早いような気がするのは自分だけか、とトリトは首を傾げる
島に来た初日に大きい荷物は既に運び終えてはいたが、こんな医療器具やら縄やら樽、等々は船完成までどこに保管しておくのだろう?


「船の荷物は、船大工達の倉庫を借りてそこに保管出来るようになってる」
「へぇ、そうなのか」
「しっかりしろよ、船大工見習いサン?」
「…分かってるさ」



右に半歩動け。ローの指示通りに横の戸棚の方へ移動する。さすが外科医集団と言うか、医療技術のある子達ばかり集まっている一味と言うか、医療品の数が半端ではない
あ、それテレビで見たことあるな、と言うものから中にはそれは一体何に使うものなんですか?と聞きたくなるような物騒なものまで出てくる
医学はちっとも齧っていないので分からないのだが、トリトにはそれらの品を不要だろ?とは言い出せなかった


「、トリト、トリト聞いてるのか?」
「すまん、ボーッとしてた」
「またか」
「何だ?次はどっちに移動すればいい?」


また移動の指示だろうか、とローに訊く為に顔を上にあげれば、
ガバッと言う音が聞こえてきそうな勢いでローが頭を下に下ろしてきた。
ローを肩車させながら、逆さになっているローの顔とトリトの視線がかち合う、不思議な態勢だ
バランスを取る為なのだろう、
ローの両手がトリトの顔をそっと掴んだ



「…なんだ?頭に血が上るぞロー」
「……バカトリト」
「なぜ」


至近距離に恋人の顔があるのに、なんにも思わないのかよって聞いてんだ。


「……すまん、ローの頭に血が上らないかばかり心配している」
「そう言うトコロがまだ恋人っぽくねぇってんだよ、アホトリト」
「ならここから何をすればいい?」
「決まってるじゃねぇか」
「……キスでもするべきなのか」
「ご名答」


ニヤァ、と笑ったローはもう目を瞑っている。それは待機してます、ってことなのだろうか

自分で答えを出しておきながら、トリトはグッと喉を詰まらせた
キスをしろと?こんな状況で?
クルー達は気を利かせたのか空気を呼んだのか、別の部屋に移ったようだがそれさえも恥ずかしくなる行動だ


「トリト、はやく」
「い、いや、あのな、ロー」
「……何が不満なんだ」
「…あえて言うならこの態勢だろうか…」


そろそろ、足が、限界

冷や汗掻きながらそう伝えたトリトに、ローははぁっと溜息を吐いた。
ようやく、トリトとキス出来ると期待しただけに、理由がそんなもので止めることになるなんて、と



あからさまに落ち込んだローの顔を見て、トリトはまた詰まった
よく考えれば、あのローが、してくれと強請ったことだと言うのに、お前はそれを叶えてやらないのかトリト、


「ロー、そのまま動くな」
「え、」


トリトが顔を動かした。
掠め取ったのはローの唇ではなく、少し上の鼻の先だった

あ、と思ったのは双方で


「…しまった、少しズレた」
「は、鼻先…!?」
「悪いな、ロー もうオレは羞恥が限界だ」
「……、…」
「ロー…?」


鼻にする奴がいるか!今から口にしろ

ぐらいローに言われるかと思っていたトリトだったが、ローは黙ったままそろそろと身体を持ち上げて顔を元の位置に戻した
触れられた鼻先を抑えて、ローは見る見る顔を染める。その姿はトリトには見えなかった


「?ロー?怒ったのか?」
「バカトリト!何でこんな事はサラッとやるんだ好きだバカ!!」
「……怒ってるのか喜んでるのかどっちかにしてくれないか」


ところで、もう降りてほしいのだがローよ




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