恋情増幅 | ナノ
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「オレの幸せは、ローの傍でずっとローを見ていることだ」



トリトのその言葉が、とても嬉しい筈なのに
様々な感情が綯い交ぜになって素直に受け止められないローは叫ぶ
ここで勘違いを起こしてはならない。期待をしてはならない。自惚れてはならない。
トリトの言う"傍にいる"と言う行為は、家族的な意味でそれ以上の意味を伴ってはいないのだろう。それじゃ駄目だ、それじゃ嫌なんだと。これは我侭ではない。
愛している人には愛されたい。それが当然ではないか



「…っ!うるさい、おれはいつまでもガキじゃねぇし、おれはトリトの子どもでもない」
「そうだな。ローはオレの子どもじゃないな。オレの大切な人だ」
「…………その言葉もどうせ、家族の意味で大切な、ってことだろ?」



以前の自分ならば、その言葉でも充分に嬉しく思った筈なのに、
物足りないと思ってしまうのはトリトが同じ世界に居るせいで贅沢になってしまっているんだ
しかしトリトは違うと首をゆるく振る



「違うなロー」
「…なにが違う」
「覚えてるか?確か、オレは昔伝えた事がある」
「?」
「"ロー、お前を愛してる""こんなの、彼女にだって言ったことない"」
「!」



その言葉は、ローがトリトの世界から去る際に聞かされたトリトからの言葉
ローはコクリと頷く。忘れている筈がない。誰かからもらった、初めての愛の言葉だ
覚えていると示したローに、トリトが微かに笑う



「確かにあの言葉にも今の言葉にも、ローが言うような"家族的"な意味を含んでいたよ。でもお前を愛してると言った言葉に嘘偽りはない、今までもこれからも。
 オレはローを愛している。ずっとお前の傍にいれるなら、オレはお前の海賊団のクルーでも、兄弟でも親でも何でも良かった」



それじゃ嫌だ
思わず食い気味にトリトの方へ身を乗り出したローの肩に、トリトの手が置かれた。
そして触れられて初めて気がついた。トリトの手が小さく震えている。汗ばんでもいる。
緊張しているんだ。どうして?



「でもそれがローにとっては不服なら、オレはローの望む関係になってやれると言う気持ちがあるぞ、ロー」
「な…!」


息を吸い込んで吐き出されたトリトの言葉に、ローは目を見開いた
ローが望む関係
それは1つしかない。それは、それはつまり



「トリト、おれは」
「お前はオレと、どうなりたいんだ?」



ふわりと微笑んだトリトの老いた今の顔に、昔に自分の傍にいてくれた若いトリトの顔が一瞬フラッシュバックする


いつの時のあなたなど関係ない。今ローの目の前にいる人間がトリトで、そんなトリトが言ってくれているんだ。遠慮なんてする必要はないだろう。言ってしまえ



「……トリトの、一番傍にいても、おかしくない関係に、してほしい…」



見つめてくるトリトの目は、明らかな感情を宿していた
ローは首まで真っ赤に染まった顔でトリトを見つめる。
トリトよりも震える手は隠せる筈もない



「ああ」
「!!」



力強く背に回された手が、ローの身体を引き寄せる
急接近したトリトの身体に、普段は自分からひっついて居るくせにローの顔は先ほどよりも赤くなった
それよりも、今トリトは何と言っただろうか。了承した。ちゃんとローの言葉の意味を正確に捉えているのだろうか。ここで違えてしまったままでは、結局元通りだ



「トリト!今の言葉の意味は、」
「分かるよロー。恋人になろうってことだろ?」
「…!………伝わってるようで、よかった」
「ローこそオレみたいな男でいいのか?オレは38のオッサンだし、収入は安定してないし、"優しいだけじゃ嫌"とか言われて女にフラれるような奴だし」
「その女見る目ねぇーんじゃねぇのか」
「…即答は嬉しいよ」



ふぅ、と呼吸を整えたトリトが腕の力を強くする




「オレは、"ロー"と言う人が好きだよ。お前は誰より愛されるべき人間と答えたが、その最たる者に、オレがなれればいいと思っている。こんなオレを好いてくれて、ありがとう、トラファルガー・ロー」
「…トリトっ…!」そんないちどにいわれたら、うれしすぎてからだが、あつい



夢じゃないか。トリトの背に回している手に力を込めてみる。間違いじゃない。トリトは今ここにいる
今までの言葉に嘘偽りはないか。抱きしめられているせいでトリトの目は見えないが、トリトはこんな状況で酷い冗談を言うような人ではない。それを何より知っているのは、自分でありたい

綯い交ぜになっていた感情が、次第にローの中で整理されていった



「…っ、ずっと…!好きだったんだ…!17年間、一度だって忘れたことなんてない、あんな、夢みたいな時間を…トリトを…!」
「ああ、ロー。ありがとう」
「好きだ、トリト 大好きだ」
「――オレもだ」













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