恋情増幅 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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やめろやめろやめろ!男たちの手に松明が持たれていたことに焦りを感じたのは間違いじゃなかった。やめろ!ソレを傾けるな!そこにあるのは船だぞ!燃やせば燃える、燃えれば墨になる!墨は船じゃない!


「やめろ!その船に近付くな!」

「あ?何だオッサン」
「ハートの仲間だろ。1人で掛かって来たのか?」
「強そうには見えねぇけどなぁ?」


ズラズラと構えられたサーベルの切っ先が向けられる。桟橋に追い込んだ態勢なのは此方の方なのに、丸腰のせいで逆に追い込まれてるようだ
しかし逃げてはいけない。いつまでも逃げ腰及び腰では、男が廃るしハートの名を傷つける


「…船は、壊させない」
「1人で守れきれるかよ!」


声を上げながら海賊が突撃してくる。

焦らないよう、慎重に頭を動かした。落ち着け、ここは広い砂浜ではなく、狭い桟橋だ。落ち着いて、少数を相手に出来る。ギリギリまで男を引きつけて、最小の動きでサーベルを交わす。しゃがんだ反動で鳩尾に拳を入れ、手から滑り落ちたサーベルを足で海の方へ蹴り落とした。まず1人を後ろに流し、続いて向かって来た2人の海賊たちは1人がサーベル、1人が松明を掲げている。火は剣よりも恐ろしい。少し触れただけで焼けてしまう。半歩後退したトリトは、桟橋に掛けられていた船を固定するのに用いられる縄を手に取った。ずっしりと重いそれは多分に海水を含み濡れている。その縄を松明を持っていた男に向かって投げる。狙い通りに松明の火は消すことが出来た。顔面に重い縄が当たり悶えた男をそのまま海に突き飛ばす。しかし横から襲いかかって来ていたサーベルは避けられない。脇を突かれ、ツナギが破れ肌を斬られた感触に呻いた。だが倒れる程ではない。サーベルの第二波を寄越してきていた男の手首を掴み、逆側に捻ってサーベルから手を離させる。そして男は海に棄てサーベルは手に取り、残りの2人の方へ走った。松明を消したせいで、桟橋には月明かりしか照らしてるモノがない。でも此方からは残りの2人の姿がよく見えた。サーベルを持ち、もう1人は銃を構えている。兎に角、銃を持っている方から対処しないと危険だ。しかしまず走って来たのはもう1人の方で、サーベルを突き出してきた男のそれに此方も同じくサーベルを突き返す。刃で受け止めたが力負けし、大きく弾き飛ばされる。丸腰になった此方を見逃したりしない海賊はそのままサーベルを振り下ろしてきた。咄嗟に、足元にあった大判の木板を盾にした。木目にとらわれ抜けなくなったサーベルと、焦る男に笑みを返す。刺さったサーベルごと男を海に突き落とし、もう一枚木板を掴んで最後の男に向かった。ダァン!と耳横スレスレのところで大きな音が響いた。しかし耳たぶを掠った程度だ。手にしていた木板を横にし、思い切り男の横っ腹に打ち込んだ。メキッと音がしたぐらいだから、どうか致命傷であってほしい。


グラリと傾く男の姿を見下ろしながら、トリトは何度も呼吸を整えようと試みる。海に浮かんでいる男や、桟橋の上で延びている海賊たちを、トリトは信じられないような目で見ていた。これは、全部自分がやれたのだろうか。そんなまさ、


「ぐぁあ…っ!」

「! ……ロー」
「ちょっとツメが甘かったな」


最初に倒したと思っていた男が起き上がり、トリトに銃を向けていたのを追い付いたローが昏倒させたらしい。



「……でも、凄かったぜ。トリト」
「…やはり、これはオレがやれたのか」
「無我夢中だったか? ぜんぶアンタがやったんだぜ。……よくやった、トリト」
「……ああ、やったぞ、ロー」


船は、まもった





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