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他人には解らないことでも、本人にしてみれば至極当然である事がある
ローにとっては、それがトリトと言う男との出会いのことを指す


子ども時代の美しい思い出――それを今日まで大切に心に仕舞いこんで何が悪い。
他人から見れば鼻で笑うような記憶でも、ローにとっては大切な過去だ。
男であり海賊でもあるくせに…そんなくだらない諸々を差し引いてもローはあの19年前の出会いを忘れない。
(男だから、)(いい年なのに、)(海賊のくせに、)それがどうしたと言う。
暗く荒んだ少年時代に差し伸べてくれた温かな手の持ち主に恋焦がれ続けて、なにがいけない。他人にはわからないんだ。トリトと言う男の優しさも、温かさも、無条件に与えてくれた安心感も、負の心を瓦解させるあの笑顔も




「キャプテンは、トリトさん大好きだもんね!」
「…あぁ……だいっすきだ……」
「いっつも聞かされてるから、みーんな知ってるよ」
「…そんなに…言ってたかおれは…」
「酔うと饒舌になるもんね たまに寝ちゃうけど」



有名な名前のラベルが入った酒を片手にローはベポの膝の上で酔い潰れている。ぐでぐでと赤くなった顔はローの酔い潰れ度を表していて、今日はかなり飲んでいた
ベポは酒をあまり飲まないが、飲めば皆が楽しく騒ぎ出すのを見るのが好きだった。シャチなんてすぐに気分が高まって脱ぎだすし、ペンギンはああ見えて飲めば酒乱で、誰も頼んでないのに船内の掃除をし出す。コックは美味しい料理をつまみに出してくれるし、皆楽しそうでベポも楽しくなる

でもキャプテンは例外だ。バカ騒ぎはしないけど、酔うと必ず昔を思い出すようで、時折苦しそうな顔をする。過去に何かあったみたいで、仲間になる以前のローのことが解らないベポはキャプテンの口から「ドフラミンゴ」と言う単語が出だすと必ず「ねぇキャプテン!"トリト"さんのお話聞かせてよ!」「トリトの…?しょうがねぇなぁ…」と、話題を転換させた。

"トリト"、その人物はローの治癒剤のようなものだ。苦しげな顔から一転、本当に楽しそうな顔で"トリト"と言う男の話をする。繰り返し聞かされる話も多々あったけど、ベポはちゃんと聞いた。キャプテンが苦しくなる話なんて、しちゃダメなんだ。キャプテン、今日もトリトさんの話して!







「色々あったけど、トリトさんとまた会えてよかったね」
「………おれは、嬉しかった、けど」
「え??」
「トリトは………どうなんだろーな………」



ポロッ
ローの目から涙が零れた。「きゃああキャプテン!泣かないでー!」お酒が入るとこうして涙腺も緩くなってしまうローの頭をベポはよーしよしよしよしわしゃわしゃわしゃー!と撫でてやる。やばい。これは大変やばい状況だ。酒が進んで酔いが極限にまで回ったキャプテンは悪酔いすると泣き上戸で酒乱人と化す!どうして泣いたのどうして泣くのキャプテン!




「トリトさんがどうしたの!?」
「……あいつは、おれと会えて、嬉しいのかな……」
「えぇっ!?う、嬉しがってるに決まってるじゃない!どうしたのいまさら」
「………だってあいつ、船降りるかもしれないって……おれの事なんて…どーとも思ってねぇんだどうせ……」
「それはないよ!トリトさん、この船で楽しそうにしてたじゃない!」
「…っ、じゃあ何でこの島に残るかもとか言い出すんだよ!」
「そ、それは」
「バカ!アホ!クソトリト!どうしてアイツはおれの事子ども扱いすんだよ!「キャプテン、おちついて!」オッサンのくせに!もうおれはアンタの思ってるような17年前のガキじゃねぇんだぞ!「う、うんそうだね!」おればっかり!19のアンタにホレたおれが間抜けみたいじゃねぇか!「それはないよキャプテン!」あーあーあー女々しく引き摺って悪かったなボケ!思い出ってのはな徐々に美化されゆくもんなんだよ!初恋ってのはな人間みんな美しく思うんだ!「そうだね!おれもいまだに初恋のメス熊ちゃんのこと忘れられない!」だろ!?そうだろベポ!!どんな女と出会ったって脳裏にトリトがチラついて新しい恋どころじゃねーんだよ!寧ろ責任はアイツの方に10割あるだろ!チラついてんじゃねぇよ!邪魔すんなよ!あーもうまた要らんこと言った!17年前も勢い余って要らんことまで言ったんだよ!「そ、そうなの?」大体おれはあの時にトリトが好きって告白したのに「告白してたの!?」ああ!そんでトリトもおれに「愛してる」って言ってくれたのに「トリトさん言ったの!?」おお!それをもう忘れてるみたいな感じが余計腹立つ!!いつかしばく!!もしかしてもっかい言うべきなのか!?トリトが17年前から大好きです好き過ぎてあなたのことばかり考えて毎日つらい日々を送ってますどうかおれをあなたのこいびとにしてくださいあらかしこって眠い」


ツラツラツラツラと淀みなく喋り続けていたローだが、話し終えるとガクンとうな垂れた


「もう寝ようキャプテン 宿までおれが負ぶっていくからさ」
「……ああ…たのんだベポ……」




直前まであんなに騒いでたのに、すぐに寝息が聞こえてくるのは本当に凄いなあと思う

持って来ていた酒瓶を纏めて、キャプテンを背中に乗せてさぁ帰ろう。夜も冷える。キャプテンに付き合えと言われた時は、こんな長話になるとは思ってなかったから。帰らないとみんな心配するし。あ、でもトリトさんどうするのかなぁ……まさか島に残るなんていわないよね……うぅブルブルそんなの考えただけでこわい




























「……………オレは、一体どんな顔して帰ればいい」





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