頭を冷やした方がいいですよトリトさんも。夜風に当たって来たらどうですか?キャプテンも外に出てるみたいだし
部屋で煮詰まっていたオレに掛けてくれたシャチ君の助言はありがたく受け取らせてもらおう。グルグルモヤモヤして、とても思考回路が働かなかった。
外はすっかり暗くなり、通りに見える店の明かりがポツポツと眩く夜を照らしていた
とりあえず歩こう。アテはないから、とりあえず船の方へ
海賊を辞めて、船大工にならないか。どうしてこう2つに1つの選択肢に弱いのだろうかオレは。海賊を魅力的だと思ったことはない。痛いし血腥いし骨が折れることばかりだ。ローがいるからいて、確かにクルーの皆は良い子たちばかりだけどソレとコレとはあまり関係していないように思う。極論として、ローたちも一緒に船大工になるのなら、今すぐにでもそっちの道を選ぶのに
船が停泊する海に着く。トボトボと歩いた割には早く着いたようだ
「あー…どうするかな……ローがいるから、船大工にはならずに今のまま海賊を………」
しかし、"ローがいるから"とはなんだろうか
自分にとって結局ローは何なのか。10数年前に助けた不思議な子ども・我が子のように兄弟のように可愛がった奴 ……何故ここに疑念が沸くんだろう。分からない。まるでガキの色恋沙汰みたいな悩みだ
帰るか。と目線を動かせば、港から海の方へ伸びる桟橋の上に、見慣れた人影を2つ見つけた
目を凝らさなくても分かる。ローと、ベポ君だ
こんな夜にあんな場所で2人で何をやっているんだろうか?
コソコソとバレないように桟橋に近付いて、ギリギリ2人の声が聞けるか聞けないかの位置で小船の陰に隠れる。どうしてコソコソしてるのか。分からないが何故かこうしなければいけない気がしたんだ
「………船長、あんまり飲むと身体に毒だって聞いたよ。あぶないよ」
「いいんだよ……気分だ」
「…トリトさんが心配しちゃうよー」
「…………………トリト……」
……なんでそんな熱っぽい声で名前呼ばれた?
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