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親父みたいだと思った




自分が元いた向こうの世界の故郷に住んでいるであろう親父だ
ここまで筋肉もなければ上背がある訳でもなし、しかし纏う雰囲気と言うのだろうか、それが故郷の親父と似ていた
聞けばガンズさんにもオレぐらいの息子がいるらしい。その息子さんは海に出てどこかの島で家庭を持ち同じ船大工の仕事をして住んでいるそうな。寂しかないが、一度は孫の顔が見たいもんだと笑っていた

自分の親父はここまで豪快に笑う人ではないけれど、それでも親父がダブる
もしかすれば、ずっと会っていないから理想とか幻想なんかを抱いて重ねてるだけかもしれないが

だから、ガンズさんが故郷の親父に似ていると思っていたせいで、ついうっかりガンズさんを「親父」と呼んでしまったことに関しては仕方ないと思ってもらいたい。
一瞬呆けた場に、ガンズさんの豪快な笑い声が響く



「ガッハッハッハ!"親父"なんて呼ばれるのはいつぶりだろうな!」
「す…すまない つい、」
「良いってことよトリト!少し嬉しかった!」
「そ、そうですか…!」



良かった機嫌を損なわせないで。意外とこの船大工の仕事、気に入っていたんだ

「そこの木材運んでくれるか」「はい!」「あー、アンちゃん、すまんがそこの工具箱投げて」「うお、はい!」「俺の女房から飯を受け取ってきてくれるか」「はい!」どうも雑用ばかりを押し付けられている気がするが気にしない。朝一で向かって「これこれこう言うわけでオレも何かお手伝いしたいのですが!」と言った自分に「構わねぇぞ」事も無げに言ってくれたのだ


そう言うわけで朝からずっと船に付きっ切りだった。すごく面白い。設計図は既に決められていたようで、次々と骨組みが組み立てられ木材が切り出されコーティングされ…兎も角すごく見ていて楽しい。
気が付けば昼はとうに過ぎていて、ペンギン君が「トリトさん、昼食の時間ですよ」と声を掛けて来てくれなければ時間に気付かないままいたかもしれない



「なかなか楽しそうでしたねトリトさん」
「ペンギン君には分かったか」
「多分誰が見ても思いますよ ガンズさんは良い人でした?」
「ああ!親父みたいなんだ」
「おやじ?」
「元の世界にいる、オレの親父だ」
「…へえ」






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