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新聞にデカデカと書かれた『ハートの海賊団・海軍支部を襲撃!』の文字をベッドに横になっているトリトに読ませる為にわざわざ広げて見せてやっているけど、本人は事の重大さをいま1つ理解していないらしい。多分えらいこっちゃぐらいにしか思ってないのだろう。
まだトリトには見せていないが、ローは懸賞金額が上がった。よもやあんな海軍支部を襲ったぐらいじゃそこまで上がらないだろうとは思っていたが予想に反して額は結構上がっていた。海軍基地から逃走してから数日、まだ全快とまでは行かないが何とか一命を取り留めつい先ほど長い眠りから覚めたトリトに控え目なタックルをお見舞いしてやった。蛙が潰れるような声が聞こえたが知らん。様々な心配事をさせた罰だ。寧ろこんなモノでは足りないぐらいなのだが



「間抜けにも攫われて助けに向かってしかもボロボロの身体に手厚い看病を続けたおれに何か言わなくちゃいけない事があるだろうトリト」
「そうだな、本当にな。伝えきれないが、何から何まで本当に助かったよロー。ありがとう。凄くありがとう」
「何だそのバカバカしいお礼は」



はあっとこれ見よがしに溜息を吐いてやり、ローは近くに置いていた椅子をベッドに引き寄せて座る。長い足で横になっているトリトの脇腹を軽く蹴る。「痛いいたい」と微塵も痛がる素振りを見せずに笑っているトリトの顔を見て、ローはほんの少し口角を上げた。そんなローの顔を見て、トリトはまた笑う




「トリトのせいで、あの島で補給が充分に出来なかったな」
「ああ…そう言えばそうか。結局あの島に滞在してたのは1日にも満たなかったな」
「アンタには、内容の濃い1日だったんじゃねぇか?」
「そうだな……海賊の1日って、凄く濃いな…」
「全部の海賊がああなんじゃないからな。あんなの毎日あって堪るかってんだ」
「そうか………しかし色々あった……」
「まあ過ぎた事をグダグダ言う趣味はないが、全快した暁にはコキ使うから覚悟しとけよ」
「…怖い事言ってくれるな」
「ってペンギン達が言っていた」
「あの子らがか……!!」



ベッドの上でまた顔を青くさせるトリトを笑っていると、医務室の扉がドンドンドンと叩かれる。「入れ」と声を掛けると、クルー達がわあっ!と雪崩れ込んできた。先頭のベポなんて鼻水垂らして泣いている




「トリトさーん!意識戻ってよかったー!」
「おぉベポ君 それに他の皆も…」

「トリトさん、とても心配しました」
「死なずに済んで良かったっすよー!」
「お前さんのせいで危うく俺がキャプテンからドヤされるとこだったじゃねぇか!」
「……あ……無事で…何よりですトリトさん……」



全員入ってくるんじゃないかと言う勢いで医務室が人で溢れかえる。口々に告げられる言葉に笑っていると、そう言えばこの子達にはまだお礼を言ってないなと思い、トリトはまだ少し痛む胸を我慢しながら身体を起き上がらせる。間髪入れず飛んでくる「横になってないと!!」の言葉とローの心配げな目に大丈夫だと返し、皆の方を向いて深々と頭を下げる



「…この度は、みんな本当にありがとう」

「…トリト……」

「正直、牢屋に入っていた時は皆がオレを助けに来てくれるだなんて微塵も考えていなかった。でも皆はオレを迎えに来てくれた。もっと皆を信用しなければと思ったよ。海賊としても船乗りとしても、人間としても未熟なオレだが、これからはもっと皆の為に、ローの為に尽力すると誓うよ。身体が回復した時は、思う存分しごいてやってくれ。………以上だ。  いたたたたた急に傷が痛み出した寝ていなくてはな」

「あ!トリトさん恥ずかしいからってそんな嘘言わなくても!」
「思いっきりしごいちゃいますから早く良くなってくださいねぇトリトさーん!」
「トリトさんはもうとっくに俺達の一員ですよね」
「掃除も上手だし」
「料理はまあまあだけどな」


「………ほんとに、トリトは……」




皆から背を向けているトリトの顔が赤いのは、隣に座っているローには丸見えだ。でもトリトのその顔に負けないくらいに、今のローの顔も真っ赤っかだ


今となって思い出したのだ。
海の中で合わせられたトリトの唇の感触を。
何度思い出したって、赤くなってしまうのはしょうがない。


あれが水の中でなければ、
酸素を分け与える行為ではなく、
愛を伝える行為であれば。


そこまで考えて、ローは赤くなった顔を晒すまいとコッソリ甲板に逃げた

手に持っていた新聞を床に捨てる。パラパラと紙面が捲れ、現れた新規の手配書にはローの顔












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