恋情増幅 | ナノ
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一見して勝てない相手ではなさそうだが、どんな実力の持ち主かはまだ不明だし、何よりコッチにはトリトがいる。普段なら少しばかり無茶な強硬手段に出てもいいのだが、トリトがいるとなれば話は180度変わってくる。取るべき作戦は、出来るだけ安全かつ迅速に



刀を構えてトリトの大きい身体の前に立つ。
勿論トリトの盾になる気ではない。盾となって攻撃を喰らう前に、トリトに飛び火しない内に、こっちが向こうを伸してやるのだ




「トラファルガー・ローか…お前程のルーキーが、まだ懸賞金一億以下でウロウロしてるなんてな」
「名前が知られてて光栄だ。だがおれは無駄な争いはしない派なんだ。基地を襲撃したことは申し訳ないが、仲間の為だったんだ。見逃してくれやしないか?」
「笑止。支部と言えど基地を任された身。海軍中佐として、1人として逃がさんぞ」



やれやれ、血の気が多い奴はこれだから厄介なんだ
見た感じ、何かの能力者ではなさそうだが油断はできないな



「トリト、」
「ん、んん?何だ?」



向こうに聞かれないように、前方を向いたまま背後のトリトに小声で声を掛ける
あちこちから騒音がするが、トリトは俺の声が聞こえたようだ



「トリト、おれの言う通りに動けるか?」
「あ、ああ。全力で動いてみせるさ」
「頼もしいぜ。  おれがアイツを引き付ける。その間に、トリトはこの先の廊下を右に曲がって振り返らず駆け抜けろ。その先で海と平行した開けた場所に出る。そこに船を持ってくるようクルーに命令しているから、そこから船に飛び移れ」
「飛び移る…!? い、いや分かった。任せろ だがロー、お前は1人で大丈夫か…?」
「おれは単独行動タイプなんだ」
「…わ、分かった」



そっとトリトが後退して行く気配がする。目の前の中佐は、取り逃がすかと言わんばかりに動き出した。老体のくせに、思っていたよりスピードが速い「!」海兵が手にしている武器はトンファーだ。腕を揮い放たれた一撃を長刀で押し留める。ここは通さない。トリトの安全が確保出来るまでは死んだって。今度は、おれがトリトを救う番だ。手首の紺色のネクタイを愛おしく見やる。17年前の恩返しには到底足りない、足りるなんて思わないけれど






「ロー!!!」
「ッいいから!早く行け!」
「…っ!」



相変わらず、自分のキズにも鈍感なトリトは気付いてなかったかもしれないが、手刀を受けたと言う首筋が赤黒く変色していた。痛くないはずがないのに、トリトはそれにさえ気付いていないようだし、世話が焼ける。早くココを脱出して、手当てしてやらなければ




「…逃がしたとて無駄だ。必ず全員拿捕する」
「フン……アンタじゃあ無理かもだぜ? "ROOM"」
「!?」




サークル内に男を取り囲む。不穏を感じた男が数歩後退した。だが幾ら後ずさろうと無駄だ。このサークル内からは取り逃がしたりしない。これでアンタはもう逃げられないぜ



「奇怪な能力め…!」
「これがウリなんだがな?」
「…お前の能力に対して情報が乏しいのが無念だ…。しかし、こんなモノには私は負けん!」
「な…」



男が両手のトンファーを打ちつける。打ち付けられたトンファーから無数の針が飛び出してきた。(暗器か…!?)数本は叩き落としたが、幾らかが頬を掠めて行く。赤い筋が出来、そこから生温い液体が滴り落ちた



「……面倒な武器だな…」
「ただの針じゃない…麻酔針だ」
「なに…!?」
「少し触れただけでも、直に動けなくなる」



畜生が。動けなくなる前にお前の胴体切断してやるよ


上げた右腕が微かに重く感じたのに舌打ちする。即効性か、




「っ!」

「! ――う、腕が…!?」

「……くそっ」



手元が狂った。本当は胴体を狙ったのに


右腕を切り落とされた海兵はさすが中佐と言うべきか、すぐに冷静を取り戻した。
片腕が残っているなら関係ない、と言わんばかりの眼光には苦笑する。これだか、ら、嫌い、なんだ、海軍……は…




「…!」
「……はは、もう動けなくなってきたか」
「…ふざけ、んな…」



両腕が痺れてきた。
顔が動かせない。ああ、くそ!麻酔で身体が動けなくなるなど、予定外だ!これでは、先に逃がしたトリトの後を追えない!




「――大人しく床に沈め!」
「…っ!」



片腕のトンファーを構えなおした海兵がおれを視界に捉える。畜生、ROOM内に相手を捉えてんのに、それでこのザマなんて情けない


顔が動かせなくなったせいで、襲い掛かる痛みを真正面から受け止めることになりそうだ、と他人事のように考えた



しかし、向かってきていた海兵の姿は、横から乱入してきた背中によって遮られた


え、






「――ぐ! あ、あああ!!い…っ、!たくない!!いたくねェ!!!」




「…な…!?」

「貴様…、さっき逃げた…」



なんで、なんで もどってきてるんだよ、



「トリト、トリト!!!」





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