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「#幼馴染」のBL小説を読む
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果たして、先客だった男の声はお仲間さんにキチンと届いたのだろうか。
それを確かめようにも、オレと男は見張り番の海兵達に睨みを利かされてしまっている。さっき、窓に向かって叫んだのが駄目だったぽい。じっとしておけ!と怒鳴られてしまったし
しかし、あの爆発音は結局何だったのか。基地の海兵達が慌しく動き回る音がするから只事ではないのだろうけど、真相は知れない



「…で?アンタのお仲間っぽいのか?」
「んなの、足音だけで分かりゃあ苦労しねぇよ」
「そうか」



見張りに喋るな!と脅されたので首を引っ込める。一体誰が起こした何事かは存じませんが、もし出来るなら助けてください。とフワフワとした曖昧な存在に助けを求める。なんだろうなロー、何だかお前に会いたくなってきたよ




「――トリト!!」





「………… ロー…だと…!?」



今、ローの声が聞こえた気がする。
オレの名を呼ぶように叫んでいた。
気がする。


思わず牢の中で立ち上がってしまう。「ロー!!」と応えるようにローの名前を呼んだ。「トラファルガー・ローだって!?」と海兵、「お前、ハートの海賊団の1人だったんか!?」と男。各々が思い思いに驚きの言葉を口にして騒いでいるが、少し黙っていてもらいたい。ローの声がかき消されてしまう。オレが叫んだ声がローに聞こえたのかどうか。あちらの声が届いたんだから、オレのこの声だって聞こえてるかもしれない



「おいっ!トラファルガー・ロー率いるハートの海賊団一味がどんどんコッチ押し寄せて来るぞ!」
「なんだと!?」



おいおい嬉しい情報を持って来てくれたな海兵Bさんよ。あの爆発音は、先客の男を助けに来た男の仲間ではなく、オレの方だったか。散々、危ない目に遭わせるかもしれないから、助けには来ないだろうとか、色々考えていたオレだがこうなってしまっては話は別だ。今は全力で皆に助けてほしい。未だ基地のあちらこちらで聞こえてくる爆発音がこんなに心強いなんて





「 ロー!!!聞こえるかァー!!!トリトさんはココだぞォー!!!」


「き、貴様!静かにしていない…」






「――見つけた」

「!?」




見張りをしていた海兵と、伝達係だった海兵が前のめりに倒れる

その背後で、長刀を振りかざした帽子の男――ローが戸口に現れた。
その顔は無表情だったが、オレと目が合った時に肩が上下したのを見るとホッと息を吐いてくれたに違いない



「ロー!来てくれたのか」
「当然だこのマヌケ。だからアンタはどん臭いってんだよ」
「突然だったんだぞアイツ等!頭と首殴られて意識も混濁してだな」
「…また怪我したのか。帰ったらちゃんと看てやるから、今はとりあえず急いでここを離れるぞ」
「分かった、本当にありがとうロー!オジサン今猛烈に感動してる」
「当たり前だって言ってるだろ」



あんなにオレを梃子摺らせた鉄の檻も、ローの刀に掛かったら一瞬で切られ終わってしまうのだから感心する。早く、と急かすローの後に続こうとすれば、後ろ髪を引く声



「お…おい、俺もついてっていいか!」
「アンタか。どうするロー」
「……………お前、誰だ?」
「さっきからこの若造の隣に立ってたが!?」
「あぁそうなのか…トリトしか見えてなかった。時間が惜しい。来るなら勝手に来いオッサン」
「あ、ありがてぇ!」



先頭切って海軍基地の廊下を駆け抜けるローに置いてかれまいとオレと先客だった男とで必死に足を動かした。海賊だと言う男とローは良いとして、現代人なオレには少々ついて行き辛いスピードだ。
壁際には倒れている海兵達の姿。皆ボロボロだ。これ皆、ローがやったのだろうか?



「コッチだトリト。出来るだけ急げ。他の奴らが逃走の準備をしてる」
「あ、あぁ分かった」


暫く並走していると、


「………おい、オッサンは先に真っ直ぐ走れ」
「えぇ!?お、俺1人でか!?」
「オッサンも海賊なら後は何とかしろ」
「うぅうう分かってらあ!」



何だろうか?
距離が開いていた先頭を走ってたローが少し速度を落として、オレの隣に並ぶ。
ま、まさかオレって凄く足手纏いになってるのでは……



「トリト、アンタの足じゃ1人で行かせるのは不安だからおれと一緒に居ろ」
「な、何だ?オレが遅すぎたのか!?」
「違う。ボスが来た」
「ボス?」



背後の廊下を睨んでいるローの視線を辿れば、棚引く白い上着を肩に掛けた男がいる
――海軍中佐 らしい




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