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「カイローセキノテジョウが利かないから能力者じゃない」と言われたがカイローセキノテジョウ(手錠?)がどう言った代物か分からないからそのカイローセキノテジョウじゃなく、普通の鋼の手錠に変えられたってピンともスンとも来ない。ただ、牢屋って寒い。それだけは分かった。38年生きてきたけど牢屋に入ったことなんて当たり前だが初めてだった
。あと頭部と首の後ろが痛い。腫れあがっているような気がする。手酷く殴ってくれたようだまったく




「よう、お互いヘマしたなぁ」
「はぁ……いやはや全く、何が何やら」
「惚けた奴だなお前」



牢屋には先客がいた。
腫れぼったい目をした、無精髭でこう言っちゃなんだが卑下た笑みがピッタリの男
気を失ったまま牢に入れられ、床に倒れていたトリトの頭を「おーいおーい」と裸足の足で突っついていた男


「お前、本当に海賊か?」
「まあ…そのようなモノです。 でも、ココはどこなんだ?」
「ボケてんのか?海軍基地だよ海軍基地。小せぇ支部だが、そこそこ人員は割いてるみたいで無駄に海兵が多い」
「……海兵」



なるほど。ようやく流れが分かってきた。日本の海軍とは少し違うようだが、悪い者を罰する意味では同じだ
高校生の頃に軍に憧れていた記憶があるが、そのまま進学したんだったか



「おれ達、どうなるんで?」
「そりゃあお前、海賊は皆死刑にされるのが当然だろ」
「し、死刑……」


重い言葉だ。しかしそれが海賊の罪の大きさを表してるんだな



「アンタはいつからココに入ってるんだ?」
「2日前ぐれぇかな。だから、そろそろ執行されるんじゃないのか?」
「…随分余裕がありそうだが、何か強みでもあるのか?」
「ねぇな。こんなもんだろ。まああるとしたら、仲間達が助けに来てくれる可能性が、無きにしも非ず、ってとこだな」
「仲間達が……助けに…」



その言葉を聞いて、ローたちハートの海賊団の姿が浮かぶ

ヘマをしてこうなってしまったオレを、あの子達は助けに来てくれるだろうか。いや来ないな。反復法


クルー君達とは会ってまだ数日だ。義理がない。いい子達ではあるが、それとこれとは別だろう。

ローは助けに来るだろうか、と考えて、いや助けに来させるべきじゃないなと頭を振る
危険を避けて通ってもらいたいのは親心だ
ローの実力がどの程度なのかは分からないが、怪我はなるべくしてほしくない
ましてやこんな、オッサンなんかの為になど
ははは、と渇いた笑いが零れる




「…お前、何歳だ?」
「38になるが」
「なんでぇ、まだ若ぇじゃねえか」
「…若いか?」
「オレなんざ今年で59だぞ」
「本当か!?」
「たかが38の若造が、んなシケた顔してんじゃねえよ」
「………わかぞう…」


そんな風に言われるなんて。38が若造になる?
男が聞かせてくれた話は面白かった。
60を過ぎた男が統治する海
70を過ぎる大巨漢が仕切る大海賊
80を越えた老人達がトップに君臨する国

なるほど、確かにその羅列された人物達の中ではオレなんてまだまだひよっ子だ
年をとっても強くありたいのは男なら誰でも思うこと。出来るなら、なれるならオレだって力を付けたいとは思う。この世界で少しでも生き延びる為には



「…まあ、その決意ももうすぐ無くなるかもしれないんだがな」
「ぎゃっはっはっは!まあそう肩を落とすなよ!死ぬ直前まで諦めなかったら、何とかなるさ!」
「…そう言う、」



ものかね、





溜息を吐いた直後、ドン!と大きな揺れと音を感じ、牢屋全体が振動した
トリトは背中からずり落ちて殴られた箇所をまた強く打ったし、
男は顔面から床にダイブした

おいおいおい、これはどうしたどう言う状況なんだ
目まぐるしいことばかりでオジサンついて行けないぞ!




「な、何だぁ!?アンタのお仲間でも助けに来たんじゃないのか!?」
「ッタタタタ……そ、そうか!?そうかもな!?おおーい!!俺はここだあー!!」



小さな格子窓に思い切り声を投げかける男

オレは、半ば「もうどうにでもなれ」と思っていた。しょうがない。日本の現代人の危険察知思考なんて、こんなものだ






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