迷子だな
驚くほど冷静な自分に驚くが、迷子は迷子だな。
見覚えのない裏通り。こんな暗い場所、来た時は通らなかったぞ?おかしいな…別に方向音痴ってんじゃあないのにな。慣れない土地と環境のせいだからか?
買ったばかりの服と日用品を積めた袋を抱え直す。迷子だからって、心細くなるような年じゃない。分からない道に出たなら分かる道まで引き返せばいい。
「……しっかし…」
薄暗い路地の壁に、色んな紙が張られている。上にはWANTEDの文字、真ん中にはデカデカと人間の顔写真、そして下にはDEAD OR ALIVEと大小様々な数字。…値段か?この人相悪い男は、いち、じゅう、ひゃく、せん……2,000万
初めて見たが、もしかしなくてもこれが本物の『手配書』か
「おーおー…揃いも揃って人相の悪い…… ん?コイツは笑顔が眩しいな。額はー……3,000万 へー。こんな悪そうに見えない少年まで立派に海賊してるんだな」
関心するな。ローより若い奴まで頑張ってるのか。
確かに、海賊をやっているローやオレを助けてくれた船長さん達を見ていて"羨ましい"とは心のどこかで思っていた
男だ。やはり男に生まれてきたからには、「自由」に「世界」に「挑戦」したいもの
それが出来ない窮屈な日本では、考えられないほどこの世界はソレに満ちている気がした
「まー色んな奴がいるなー……… ……あ!?」
思わず目を留めた手配書。ローだ。ニヤっと笑った不敵な笑みで、手を翳しているところを隠し撮られたようなアングル
掛けられている懸賞額も、さっきの奴らよりも高い。
「ロー…アイツ、どんな事してきたんだよ…」
末恐ろしい船長だ、はぁー…と嘆息する。
すると、ちょうどオレの後ろで複数の足音が聞こえた
「…?」
見れば、帽子を目深に被った半そで、ノースリーブの白い服を着た男達が此方をガン見していた。え、は?な、なんだ?どちら様ですか?
「な…何の用で…」
「お前、今ローの話をしていたな」「え」
「トラファルガー・ローがこの島にいると言う情報が入ってきたんだ」「は」
「船長と呼んでいたな。一般人のような身なりをしているが、貴様もハートの海賊団の一味か」「な」
「速やかに投降してもらおう」「ちょ」
「さあ来い!」「お前たちは誰なんだ!いきなり何をする!」
「何をバカなことを。我々は海軍だぞ。このマークを見ても分からないのか」「…初見だよ…ってオイオイ何す、!」
頭を殴られた。一度鈍い痛みが襲ったと思えば、すぐに二発目を首に入れられる
意識を失う前に、脳裏に横切ったのは手から離れた荷物と、ローの顔だった
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