「とりあえず、トリトさんには船の掃除をするトコから始めてもらいマス」
「おお何でもどんと来いペンギン君!おじさん掃除は得意だ!」
「とても頼もしいです」
「で、どこからやればいいんだ!」
「マストからです」
「いきなりそんな所から…!?」
と言うのは冗談です。 何だ冗談だったのかペンギン君め! すみません 許そう!俺は実に寛大であるからして さすが噂に名高いトリトさんです
何と言うアホ丸出しの会話なのだろう。自分とこのクルーにまでそう思ってしまったのは致し方ないが、見ていてイライラしてしまうくらいバカバカしい会話だ。友達か。会って1時間もしない内に何漫才なんて演じてやがるんだお前たちは長年の友達か
ノリが悪そうに見えて実はギャグセンスの高いペンギンとトリトに共通点があってしまったところからしてイライラする
ペンギン好きだと?知らなかったぞ。おれのいない間に出来た好みか。知らなかったしイライラする
「定例通り甲板からの掃除です」
「そうだな。オレもその方がいいよ」
「ではこのデッキブラシをお持ちください」
「よし来た」
「ではお手本を見せます。あちらのベポをご覧下さい」
「ああ ――!?」
「ご覧になられましたか?ベポのカンフーを取り入れた画期的な清掃方法」
「とても早すぎて追いつけなかったんだがオレの老眼が原因なのだろうか」
「いいえベポの未知数すぎる戦闘能力のせいでしょう」
「そうか。ベポは可愛いのに強いんだな」
「本人に言ってやってください。喜びます」
お前たちは本当に船の掃除をする気があるのか?
掃除とかこつけてオシャベリしたいだけじゃねぇのか。
おいベポまでその輪に加わるんじゃねぇよ。褒められて喜んで笑い合ってるんじゃねえよ
デッキからコイツ等3人見下ろしてるおれがバカみたいだ
「どんなもんだペンギン君 オレの掃除センスは」
「…冗談抜きで手際がとても良いです。これなら大丈夫でしょう」
「そうか!良かった!この年にもなって、年下君に褒められるのはむず痒いが嬉しいよ」
「だそうですので、さっきから見てたキャプテンもトリトさんを褒めてあげたらどうですか?」
「な…、おれに話を回すな!」
「でもキャプテンずっと見てたよね?入りたかったんじゃないの?」
「ベポ!!」
「そうだな、実はオレも船長のローにも褒めてもらいたかったりするが…お前からしてみれば、この程度の掃除が出来るぐらいじゃ褒めるにも値しなかったか?」
「!」
ならゴメンな、次からはもっと頑張るさ
ちがう。そんなこと
「………よ……」
「?」
「……よ、く…やった…」
「 ――ありがとう」 ああ、くそ、バカトリト
アンタのその笑顔は、爆弾だって、いい加減分かれ
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