「ロー……」
「…………」
こ、この状況は何なんだ
そして夜。渋るトリトの首根っこを掴んで俺の部屋で寝るように言ったのは、やましい気持ちと言うか、邪な感情があったわけじゃない。ただ純粋に、日中、トリトと話し足りなかったから夜の時間を使って話が出来たらと思っただけ。あとほんのすこしトリトといっしょにねたいとかおもったけどまあそれはそれ
なのにこれはどうだ
船室のドアを閉めて、おそらく、無理矢理連れてきたことに対しての文句を言おうとしたトリトが俺の顔を見た瞬間
「な…トリト…、何だよイキナリ…!」
「……」
壁に押し付けられた身体が痛むけど、身体以上に心臓が痛い
あと左頬に添えられてるトリトの手が冷たくて頬が熱い
なんだ、何のつもりだトリト。どうして黙ったまま俺の目を見つめてくるんだよ
はやく用件を言え。でもこの手は放さないでほしい
「ロー……」
「トリト…っ」
ああもうじれったい、こっちから顔を近づけてやろうか、
「お前この隈は何だ!!」
「……はぁ?」
「はぁ? じゃない!隈がまた目の下に居座ってるじゃないか!せっかく子どもの時に全部消えたのに、またこの17年間で夜更かししまくったな!」
「………」
…いや……はあ??
「…まさか、さっきから見てたのはこの隈を…」
「そうだ見てた」
「………はあ…」
「クッキリハッキリ付いちゃってお前……折角の美人顔が台無しだぞ」
「 はあ!?」
「さっきからお前は同じ言葉を何回繰り返してんだ?」
頬から手は離れたが、打ち付けた背中を労わるように撫でられる
顔が熱い。トリトからは見えないでくれと必死に祈るが、
俺の顔を覗いてきたトリトのせいでバッチリ目が合った
「とりあえず、今日はもう寝るぞロー」
「…別に、無意味に夜更かししてたんじゃないぞ」
「それくらいは分かるさ。 ほら、ベッドに入れ」
「トリトは?入らないのかよ」
「いや寧ろ同じベッドで寝るつもりだったのか。オレはいい。開いてるスペース見つけて、床で寝るようにするさ」
「昔は同衾してたじゃないか」
「どうしてんな言葉使うんだ! いいから!オレみたいなオジサンと寝たら狭いって」
「言わない」
「言うんだ」
「トリトなら良い」
「そう言う台詞は可愛い女の子に言ってやれ」
「……………………」
「……久しぶりに不機嫌全開の顔だな。変わってない」
「…笑うな」
「すまん」
「…やっぱ笑え」
「どっちなんだ」
じゃあしょうがない。ローが寝るまで手を繋いでてやろう、なんて言う
何を言ってるんだ。多分トリトはまだ俺を7歳の時と同じだと思ってるんじゃないか
俺はもう24だ。手を繋いで、抱きしめてもらって、傍に居てもらって眠っていたガキじゃない。そんなことでねむれるかバカ
「……寝たな」
穏やかな寝息を立てて眠るローの隈を起こさないように撫でる
撫で付ければ取れないかな、と思ったがまあ無駄だった
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