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自分の膝に頭を乗せて酔い潰れているローにも、
散々呑んで食って歌って呑んでを繰り返し甲板で爆睡しているクルー君達にも、
自分のように適量を守っていて無事な何人かのクルー君達と目が合ってハハハ…このザマですよ、後片付けしねぇと、と言われても

誰に訊けばいいのか。この船は今どこに向かって走ってる最中なのかを
手近なクルー君に聞いても、いいものなんだろうか。こう言うのって。針路とかって、ちゃんと担当してる人がいるのか?分からん




「ちょっとそこの無事のクルーA君」
「シャチですよ。何ですかトリトさん」
「シャチ君か。すまないが、この船は今どこを目指してるんだ?」
「えーーっと……このまま行けば2日後ぐらいに人間の住む島に着きますけど」
「分かるのか?」
「船乗りなら、大体分かりますって」
「ほう…」
「それがどうかしました?」



ゴロゴロと転がっている酒樽酒瓶を片付けているシャチ君に、休んでいては申し訳ないと、ローに振動を極力与えないように手を伸ばしながら、届く範囲に転がっている食器を纏める




「いや、大したことじゃないよ。  次の島でこの船を下りようと思ってるだけだ」
「大したことですよ!!!!」



折角集めた酒瓶を落としてしまったぞシャチ君



「え、え?ほ、本気なんすか?!」
「本気だが?」
「そ、んなのキャプテンが許すはずないですって!え、てかどうしてです?折角キャプテンに会えたんですよ?こんな早くに別れていいんですか!?」
「まぁ…オレもローと会えたことは嬉しいし、出来るなら傍にいたい気もするが、 ここは海賊船だろう?オレみたいな一般人が乗っていていい船ではない」
「キャプテンの大切な人って時点でトリトさんは一般人じゃないですって!」
「だがな……戦えもしない老いたオジサンだぞ?邪魔だろう」
「そ、それは俺の一存ではどうとも…で、でもトリトさんが邪魔だってことは無いとおも…」




「まったくだ」




「ロー!?起きたのか!」
「こんだけ騒がしけりゃ起きる」



依然トリトの膝に頭を乗せたままのローは、不機嫌極まりない顔で下からトリトを睨み上げている
年月を重ね、威圧感を増したそのローの瞳にトリトは少したじろいだ



「バカ言うなよトリト 俺がアンタを易々島に下ろすと思ってんのか」
「…いや、でもお前も船長さんなら損得考えてるんだろう?オレはお前が思ってる以上に使えない人間だぞ」
「損得って言うけどな、トリト ならアンタはどうして19年前にただのガキだったオレを無償で救うような真似をしてくれたんだ?」
「あれは…お前がガキだったからだ。オレは大人だぞ」
「関係あるか。大体、島に下りたからってどうする気なんだ」
「何も考えてないが…お前の傍に居て邪魔になるのが嫌なだけだ」


「…じゃあ言うが、アンタがもし島に下りたら、俺はアンタのことが気になりすぎてこれからの戦いに集中出来なくなるぞ。いいのか?」
「……どう言う脅し文句だそれは」



それは一理ある!と酒瓶を振り上げながらシャチ君がローの言う事に賛同する
よく見れば、他の酔い潰れてないクルー組も一様に見守って来ているではないか



「それにな、トリトは1つ勘違いしてる」
「何を」
「ここにいる全員、俺を含めて皆元はただの一般人だったんだ。最初から強くて何かに秀でてる奴なんて、いないんだ」
「…!」
「だからアンタも何か探せばいい。自分がこの船でやれること。そうすれば、アンタがこの船に乗ってられる理由になるだろ?」
「……口が上手いなあロー」
「昔アンタがたくさん喋ってくれたお陰でな」



それに、とローは頭を起こし、トリトの正面に胡坐を掻く



「まさか俺の能力のこと、忘れてないだろうな? これ以上アンタがグダグダ降りるだの自分は必要ないだの言うようなら、体バラバラにして引き止めてもいいんだぜ?」
「……それは困る。生活に支障が出る」
「出ないさ。俺が面倒看るんだからな?」




ニヤァ、と目の前で、それはもう極悪な顔して笑われてしまえば、ただの一般人の俺に抗う術は残っていない。いつの間にこんなにも喋るようになったのか、加えて達者になってまあ。



「……オレをこの船にいさせて、後悔しても遅いぞロー。オジサン、ぶっちゃけて言うと心細くて寂しがりやで面倒なタイプの人間だからな」
「……そうだったのか」
「面倒くさいと思っただろ?」
「いや?」



一件落着っすか?落ち着く結果になりました?良かったですねキャプテンー!とシャチ君が嬉しそうに声を上げた





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