恋情増幅 | ナノ
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今日は宴会しましょーよ!と言ったのは果たしてどのクルー君だったか
例に漏れず宴好きのハートの海賊団は、トリトの了解もローの了承も曖昧な内に、やれ酒だ!肉だ!女だ!いねぇよ!と騒ぎ始めている。太陽も沈み掛かるか掛からないかの曖昧な時間帯から酒飲むのか。海賊ってのは凄いな。しかし自分も、昨日居酒屋ハシゴをした感覚が残っているのか、酒の入った大量のボトルを目の前にして、また吐き気がしそうだ



「ほら」
「…何の薬だ?」
「吐き気と二日酔いに利く薬だ」



その諸々に苦しんでる、とは言った覚えはないが、やはりローならそう言うのも見ただけで分かってしまうんだろうか。
思ってる以上に凄い腕だなお前

下半身の冷えも頭も大分良くなって来たし、この分ならば…と思っていると、
ドン!と言う祝砲の音が響き、宴が始まった。らしい


タル型の器に入った酒を「どうぞ!」と差し出される。日本人は付き合いを大切にする人種だ。たとえ、二日酔いで辛かろうと。「有難う、頂くよ」と笑って口を付ければ、「トリトさん紳士的ー!」と褒めそやされる。紳士的?初めて言われた……ローも笑っている



「思い出話聞かせてくださいよトリトさーん!」
「順を追って!」
「…君たちは、余程昔のローが気になるんだね」
「そりゃそうですよ!俺らのキャプテンですもん!」
「なー!」



肩を組んで隣の奴に、隣の奴に、とどんどん同意を求めていく彼らを見て、煩わしそうにしながらも笑っているローを見て、安心する
ローは愛されるべき人間。そう別れ際に伝えたんだったか。本当にそうなっているようで、とても嬉しい。親のような感情をまだ抱けたことにもトリトは喜んだ



「知っていると言っても、5歳から7歳にかけての2年間だけだ。君たちの方が、余程ローのことを長く知っているんじゃないか?」
「でもそんなに言うほどですよ!それより幼少期のキャプテンの方がレアですって」
「レア、か。そうだな、レアかもしれないな」
「おい、どう言う意味だトリト」
「いや何でも」



杯を手に持ったまま、ローがどんっと身体を寄せてくる。
ローの持っている杯に自分のを打ち付けてやると、目を丸くしている。驚いた顔も変わっていない



「幸せそうで良かった」
「………ばーか」
「なんだと」



今がどうして幸せなのかって、その理由の本人が一番分かっていなさそうでムカつくんだ





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