恋情増幅 | ナノ
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「何が一番辛かったって、」



お前の為に買った服を手放す時が一番キツかった、 トリトは苦笑した
必要のなくなったローのモノを親戚の子が生まれた時にやったんだ。手渡しながら思ったよ。これでお前を思い出す品がなくなって、ローのことを忘れてしまったらどうしようってな。



「…少し曖昧になってる部分もあるが、お前と過ごした事は忘れてないぞ」



安心しろ。その言葉で、ローの抱えていた複数個の不安の種は1つ消えた
忘れないでいてくれて良かった。自分は片時もトリトの事を忘れたことはない。だからトリトが自分のことを忘れていたのならば、それは不公平だと思ったから。



「しかし、大変なことではあるな。俺はまだ幼くて色々面倒だったが、今のアンタは年を食っている。苦労するぞ」
「まあ、そうだな。オレはお前たちみたいに強くはないし。強いて言うなら、中高と部活はライフル射撃部だったことぐらいだ」
「…初耳だ。そうなのか?」
「腕前なんて聞くなよ。ペーペーだ」
「ふーん」



そこで言葉を区切り、ローは自室のドアの方に鋭い視線を向ける
隠れているつもりなのかもしれないが、漏れ聞こえてくるヒソヒソ話はクルーの奴らが会話している音だ


音もなくドアに近付き、一気に開け放す。「うおおお!!」と雪崩れ込んできた奴らの頭を一様に蹴った



「なに盗み聞きしてる」

「だって…気になるじゃないですか…イタイ…」
「あのトリトさんですよ…イテェ…」
「キャプテンが酔っ払ったとき、耳タコになるまで聞かされたんですよ…イタスギ…」
「興味持つなって方が酷いっすよ…」

「お前ら……」



全く反省の色を示していない奴らをもう一度蹴ろうと足を振り上げた。が、



「うおおおぉぉぉ!?お、お前はあの時の熊!!!」
「トリトさーん!うわさはかねがね!」
「しゃしゃしゃしゃべったー!」



トリトがベポに胴上げされていた。顔色が真っ青になってる



「トリト、熊が怖いのか」
「誰だって怖がるわバカ野郎!」
「"ニホンジン"だからか?」
「ああそうだ日本人だか……」
「…ふっ」





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