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「#幼馴染」のBL小説を読む
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トリトが乗っていた海賊船の奴らはとりあえず数人は動けるようにしておいたから、勝手に何処へなりと行くだろう。トリトを追ってくる素振りも見せないし、お宝と食糧とトリトは無事に手に入れられたと思っていいな
甲板にあのままいては、いつまでもクルーの奴らに弄られ2人で話が出来そうもなかったから、こっちに来いと自室に引っ張った。



「入れよ」
「お邪魔シマス」
「何でそんな他人行儀なんだ?」
「いやだって、成長したお前にまだ脳がついてってないんだ」
「まだなのかよ……まあいい。そこ座れ」



そこ、と指差されたのは、何やら多種多様な医療器具や薬品やらが乱雑に置かれている机と椅子の椅子の方
ローの自室、と案内され、部屋に入った時から何となく気付いてはいたが、薬品の匂いが充満している。まさか



「ロー…おまえ」
「ん?」
「医者なのか?」



ずっと持っていた長刀を壁に立て掛け、手に入れた宝の取り分を床に置いているローの背中を凝視する
問われたローは暫し黙っていたが、「ああ」とトリトの目を見ながら頷いた。大別すれば、自分が"医者"であることは間違いない

そのローの返答に、トリトは顔面イッパイに笑顔を浮かべた



「そうか!」
「!」
「お前、医者になったんだな!いやぁずっと心配してたんだ!お前は頭も良くて器量もあって手先も器用なのに、何にも関心を抱かなかったから、そんなお前がまさか人のタメになる仕事に就いてるなんてな!」



ん?でも海賊もしてるんだろ?てことは海賊も出来る医者?医者も出来る海賊か?まあ何でもいいか!

1人で話して1人で結論を付けたトリトを呆気に取られた目で見るロー

多分、トリトが思ってるような立派な医者であるつもりはないが、十数年、ずっと焦がれていた笑顔を惜しげもなく晒しながら褒められては、脳が沸騰してしまいそうだ

久方ぶりのトリトの笑顔は、心臓に悪い




「…い、いいから大人しくしてろ。いま検査するから」
「ん?検査?何でだ」
「両手首が赤く腫れてる。眉上にうっすら瘤が出来ているな。あと、腰から下に違和感があるのが見て分かる。アンタ、自分が思ってる以上にボロボロだぜ?」



目測だけでコレだ。調べればもっとあるかもしれないな

ローのその言葉でようやく意識した。そうだ、そう言えば、頭と下半身が結構痛む
手首は縄で縛られていた時の痕で、頭のタンコブは宝箱に打ち付けた時だ。そして下半身のぎこちなさは、海面にずっと浸かっていた時の
自分でも意識の外にあった怪我をローは見ただけで分かるのか。すごいぞロー。立派な医者やってるじゃないか!



「じっとしとくんだぞ。とりあえず頭は氷嚢で冷やしとけ」
「おお。   ロー、お前あれからどうやって過ごして来たんだ?」
「…ああ、アンタの家から消えて、そのまま自宅の自室に立ってたんだ」
「家に?良かったじゃないか、知らない場所に飛ばされなくて」
「まあな。…足の冷たさが尋常じゃないな。何でこんななった?」
「こっちの世界に来た時に、板切れに掴まって漂流してたんだ」
「……危ないな」
「気をつけようがなかったしな。それで?この17年間、何やってきたんだ?」
「………ま、色々あった」
「 そうか」



外に居たクルーを呼び出して、毛布持って来いと命令しているローの手首を見る
右手首に巻かれた紺色のネクタイは、あらゆる所に目立たないキズがたくさん付いている。

たくさん、辛い目とかに遭ってきたりしたのかねえ…他人事ではあるが、心は痛む




「この毛布巻いとけ。あとこの薬を飲め。身体の体温を一時的に上げる薬だ」
「お、ありがとな」
「…俺の話より、トリトはどうなんだ?えらく見事に老け込んでるじゃないか」
「うるさい、これはナイスミドルって言うんだ。俺の方はそうだな、言えば普通だな。大学卒業して、一般企業に就職して、地道に昇進してってた真っ最中だ」
「……」



俺が消えて、どう思った?
俺のこと思い出す日は、あったか?
会いたいって、思ってくれたことはあった?
もう忘れてる頃だった?
家庭は持ってたのか?
今、また俺と会えてどう思ってる?




訊きたくてたまらない事は、何一つ口に出来ない





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