愛情構築 | ナノ
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▼05


誰かと手を繋ぐなんてことをしたのは初めてだった。繋がれたトリトの手はゴツゴツと冷たい。コッチだ!と引っ張られ、身体がそちらへと連れてかれる感覚も体験したことない。ローはムッツリと押し黙っていたけど、トリトは気にしていないのか気付かないのか、まずは服売り場を回ろうと声をかける



「ローはシャツ系が好きなのか?」
「どうして?」
「だって今着てるじゃんか」
「これは与えられたから着てるだけだ」
「ああなるほど。親御さんがな」



何に納得したのか頻りに、シャツは与えられたから着てるだけ着てるだけ…と妙なリズムで呟くトリトは、棚に置かれている男児用のTシャツでローに似合いそうな色を主観で選び次々に手に取っていた



「なんとなくだけど、ローって黒色が好きだろ」
「すきだけど、黄色もすきだ」
「なるほどデンジャラスカラーだ」



妙な英語がプリントされているのは駄目だなダサい。と言って棚に戻す
ドラゴンのプリントも幼稚っぽいな。戻す
襟元はスッキリしておいてほしい。ビラビラうっとうしい。戻す

結局、アレほど大量にトリトの手に乗せられていた服も、たった数着だけに絞り込まれた
ローの首元に宛がい、これがいいか、こっちかと試行錯誤しているトリトの様子が楽しそうだったので、ローの心配も杞憂に終わった




「…お、意外にパーカーがイケてるなロー」
「そうか?」
「よし、んじゃパーカーにしよう。あとジーンズ買う。よし、服コーナー終わりだ!次!ロー、手!」
「はいはい」



そんな大声で催促しなくたって聞こえてるよすぐ隣にいるんだから













「思ったんだけど俺って料理のレパートリー少ないんだったわ…」
「じゃあこれも買おう」
「何の本だ?」
「文字は読めないけど、この写真は料理つくってるとこだろ?じゃあ料理本だよな?」
「うん、料理本だな」



確かに必要になるかもしれない、とトリトは買い物カゴにその本を投げ入れた

室内で、明かりがあちらこちらにと輝き、新鮮そうな食材が魚介類野菜果実類とより取り見取りに並んでいる
透明なシートとパックに入った肉の大きさは、元いた世界では考えられないくらい小さい
こんな大きさでは、何百個同じものを買ったってあの男達は満足出来ないだろう
それなのにトリトは、何の迷いもなくソレを手に取っている。大丈夫なのか?そんな大きさで




「で、ローは何か食えないモノあるか?」
「パンがきらいだ」
「意外すぎる!! じゃあオレがトースト出してきた時どう思った?」
「この洋風かぶれがっておもった」
「マジか!!ごめんなロー、これからはちゃんと米出すようにする!」



パンがきらいなのは本当だけど、この洋風かぶれがって思ったのは冗談なのにトリトはペコペコとローに謝る。正直あの時は、パンが嫌いとか好きとかそんな場合ではなかった。今さら「きにするな」とも言えなくなったので、トリトと繋がれた手を引いて「はやく次行くぞ」と声を掛けた




どうやらこの"かいもの"、なかなかに時間を食うみたいだから